第1日目
朝7時40分クスコの宿を出発。運転手、コック、ポーター、ガイド、それに通訳のセサルと桑島氏の7人。アンデスを越え熱帯雨林のペルーアマゾンへの旅の始まりである。
1時間ほど走ったワカルパイ(Huacarpai)の湿地帯で野鳥を見かけ、しばらく撮影した後、標高4000メートルのアンデス越えに向かう。およそ4時間、山頂の近づくにつれ見慣れた赤茶けた山腹の景色が眼下に広が
りはじめる。
山の斜面のところどころから煙が立ち上り、帯状に広がっている。焼き畑の煙だ。この時期、アンデス山中とアマゾン川周辺の焼き畑のためペルー東部の空はかすみ
、どんよりした風景が広がっている。昨日まで滞在したマチュピチュもその影響で鮮明な写真が撮れなかった。
山頂の手前、標高3600メートル付近で昼食をとった後、アマゾン川に向かって下降を始める。あいにく天気が悪く霧雨が降っている。南緯10度といえども真冬の山頂はかなり寒い。厚いセーターを着ていても、肌寒く感じるほどだ。
さらに悪路を走ること4時間、ようやく前回訪ねたマヌーの入り口、サンペドロ(San Pedro)に着く。
標高2000メートルのこの辺りは、シダ類やパイナップル科のヤドリギなどが密集する雲霧林がつづく。大変湿気が多く一年中霧や雲に覆われている。
ここではお目当てのペルーの国鳥「アンデス岩鳥」の撮影だ。
世界中からバードウオッチャーが訪れるのは、メスを求めて求愛ダンスをする岩鳥のオスを撮影するためだ。しかし残念ながら今日は到着が遅れ、時間が4時過ぎているのと天候のせいもあって森の中はかなり暗く撮影が難しそうだ。
ISO感度を400に上げて撮影に入るが、ブレが出てしまう。それでも何枚かモノになりそうな写真が撮れたので、引き上げることにする。宿営地までまだ1時間半ほどかかるからだ。
出来るだけ明るいうちに走らないと、夜の走行は危険だ。夜のとばりが降りた6時半、ようやく最初の宿泊地ピルコパタ(Pilcopata)に到着。クスコを出てから車に揺られ続けての11時間の長旅であった。
簡素な宿で荷ほどきを始めていると、突然体調がおかしくなり始めた。体全体がけだるく熱がある。お腹の調子も変でとても食事をする気にならない。どうやら低山病にやられたようだ。
しばらくの間、クスコ周辺の遺跡やマチュピチュを探索して歩いているうちに、体が標高3000から4000メートルの薄い空気と低い気圧に順応してしまったためだろうか、低地に戻ったというのに、まるで高山病のような症状だ。