第3日目  ディオス川を下る

 まだ時差が多少残っており、早朝4時前には目が覚めてしまう。耳を澄ますと雨しずくの音がやけに大きく聞こえる。どうやら外はかなりの雨のようだ。 これではとても鳥の撮影は無理だろうと、夜の明けだした外へ出るみると、どんよりとはしているものの雨は降っていない。

 あの雨音はいったい何だったのだろうか? 不思議に思ってロッジの上を眺めると、すぐにその謎が解けた。夜半に屋根の上に木々の葉っぱに貯まった滴(しずく)がしたたり落ちていたのだ。

 それでも今日も天候の回復は無理のようだ。しかし、ロッジの管理人は午後になれば青空が見えるかもしれないと励ましてくれた。管理人の言葉を信じて次の目的地 チャロ(Charo)へ向け船出する。

  ボナンザからチャロまでおよそ90キロメートル、途中で写真撮るため止まったりゆっくりしたりするので、船の速度が時速十数キロだとすると、7時間 はかかりそうだ。昨日にも増しての長旅になりそうである。天を仰いで、天気の回復を願う。

 思いが天に通じたかのように、出発してしばらくすると、しだいに空が明るくなってきた。1時間もすると青空が見え始め、ディオス川両岸の景色が一気にカラフルさを増してきた。(写真4)

   

 何の木だろう? 橙色の花をつけた大木が目に止まる。船足をゆるめてよく見ると、木の上に猿の集団がいるようだ。中洲に上陸し近づいて対岸をよく見ると 、10メートルを超す大木に二十数匹の猿が群がり、花をついばんでいる。小猿を背負った母親の姿も見える。(写真6−7)

 目を下に向けると、中州の小さな灌木の間を真っ赤な鳥が飛び交っている。ペルーのあちこちでよく目にする鳥だ。朱色の鮮やかさがひときわ目立つ。警戒心の強い鳥で、20メートルほど近づくとすぐに飛び立ってしまう。スズメほどの小さな鳥なので、なかなか撮影が難しい。(写真9)

 再び船を出す。先に進むにつれ川幅はしだいに広くなってくる。しかし、川底は意外なほど浅いようだ。それに雨期の増水時に両岸が削りとられて、根ごと流された 大木が浅い川底に突き刺さり、船の行く手をさえぎっている。そのため、船は船首に立った水先案内人の指示に従って右に左に蛇行しながら進む。

 倒木から目を離せないのは船長だけではない。カメラを構えた私にとっても同じことがいえるのだ。倒木の上は羽を休める野鳥たちの憩いの場になっているからだ。

随所で、倒木が行く手を遮っている

 

 鳥の姿を見つけると手をあげて、スピードを緩めてもらう。しかし行き過ぎてしまう場合が多く、船を戻している間に鳥の姿は消えてしまう。両岸にとまる鳥の撮影もまた難しい。距離があるため手持ちのカメラではアップが 狙えないからだ。

 それでも何とか撮影できた後の紅茶はおいしい。日が照り、汗ばんだ頬を風に打たれながらの紅茶の味はなおさらである。

 

 


船風が寒いので、今日もポンチョを着て出発する
 

インディオの村

天気が回復すると両岸の景色が一変する

景色が一気にカラフルになってきた

 

撮影の合間の
コーヒータイム


Brown Capuchin @
(フサオマキザル)
 

A

Black Collared Hawk
(ミサゴノズリ)

 

Lesser Kiskadee
(キバラタイランチョウ)

Geotropic Cormorant
(ムナジロヒメウ)

Vermilion Flycatcher(ベニタイランチョウ)

Black-capped Donacobius
(ミズベマネシツグミ)

 


Black Collared Hawk
(ミサゴノズリ)

休息しているときは、体の大きさに比べ、頭部が小さいのが目につく。成鳥が目立つのに比べ、若鶏(亜成鳥)はさえない褐色縦縞入りの廃炉をしている。(4日目の後半と7日目に掲載)

主食は魚、普通は低い止まり木から水面の魚を急襲してさらったり、浅い水中に突入して捕食。足裏に小さなトゲがあり、獲物を捕らえてつかんでおくのに都合がよい。巣は大きな台皿形。マングローブなどの木の高いところに枝木で作り、葉で飾ることもある。 体長48〜51p

Vermilion Flycatcher(ベニタイランチョウ)

浅い池や川に突き出た枝に好んで止まる。そこに止まるオスはタイランチョウの仲間では珍しく色鮮やかで人目を引く。メスは対照的に目立たず、下腹がほんのりサーモンピンクになっているだけである。

きらびやかな色調にふさわしく、オスは州の防衛に当たっては大胆で攻撃的。求愛ディスプレイは素晴らしく、翼を震わせ冠羽を立て尾をあげてまっすぐに空中に舞い上がり、鈴を鳴らすような柔らかい声でさえずる。次にホバリングして、ゆっくり羽ばたきながらメスのそばに降り立つ。   体長14〜16p

Black-capped Donacobius (ミズベマネシツグミ)

ミソサザイの仲間では最大。因みにミソサザイの体長は8センチだから3倍もある。外敵に隠れ場を追われると、沼地の草地の見晴らしのよい止まり木で、やかましく鳴くのが特徴。求愛ディスプレイ期には、雄雌が寄り添って木に止まり、頭をちょこちょこ動かしたり、しきりに尾を振ったりする。   体長23センチ