マチュピチュの探索を終えホッとしたその夜から、どうやら高山病の気配。たかが高山病と高を括っていたところ、翌朝起きてみると、下痢、発熱、頭痛に吐き気、聞いていた高山病の症状がすべて出てしまった。まさに高山病症候群のオールスター勢揃いといったところだが、そんなのんきなことを言っているどころではない。
こんな状況で、これから8時間もかけてチチカカ湖湖畔のプーノの町へ旅立とうというのだ。それも標高はクスコからさらに1000mも上がった富士山より遙かに高い町へ、なんと暖房もトイレもないバス(現地では当たり前)で行こうというのだから正気の沙汰ではない。
日程の決まった旅だから、泣き言は通用しない。周りを見ればどうやら参っているのは私だけではなさそうだ。気遣ってくれる添乗員さんに励まされて、バスに乗り込む。あとはただひたすら忍の一字。
道半ばで、標高4335mの峠にさしかかる。富士山より600mも高い。記念撮影のためバスを降りるが、ゆっくり歩かないと息切れがする。その後、峠を下った所で昼食。バスを降りて、草原で美味しそうにおむすびをほおばっている人達がいる。とても食事をとる気になどなれず、バスの中で青息吐息の私には、摩訶不思議な光景に映る。
8時間に及ぶ難行苦行の長旅を終え、ようやくチチカカ湖湖畔のプーノの町、ビラコチャ伝説ゆかりの地に到着。ホテルは辺鄙な町にしてはなかなか洒落ていて素晴らしい。さっそくチチカカ湖を小型船で遊覧することになった。添乗員さんが気遣ってくれてホテルで休むよう勧めてくれたが、ここまで来てチチカカ湖を探索しない手はないと、思い切って船に乗ることにした。
チチカカ湖に浮かぶトトラ(葦)の島・ウロス島に近づく頃、不思議なことに、高山病はすっかり何処かに行ってしまった感じだ。高山病は、なにかに夢中になっていると消えてしまうと言われるが、まったくその通りである。ここが高山病が病気のようで病気でないと言われるゆえんであろう。
ウロス島に降り立ち、インディオの湖上生活を見学させてもらうことにした。ここで、驚く光景に出くわすことになる。なんと、茅葺きならぬ「葦葺き」の小屋の中にはにテレビがあるではないか。更に驚くことに、そこにはポケモンが映りだされていた。地球が狭くなっていることが否応なく実感させられたワンシーンであった。
聞くところでは、2年ほど前、高性能のアンテナが葦の島に立つようになり(聞き漏らしたが、多分政府の援助によるものと思われる)、湖上のインディオたちもテレビを見ることが出来るようになったとのことであった。それにしても、ペルー南端、標高4000mのチチカカ湖上で、よもやポケモンを見るとは夢にも思わなかった。