日本百名山「美ヶ原」を訪ねる
車山から40分ほど走ると、美ヶ原(うつくしがはら)に着く。
美ヶ原は長野県の松本市、上田市、小県群長和町にまたがる日本百名山の一つで、最高峰は、王ヶ頭(おうがとう)(2,034m)。他に、王ヶ鼻(2,008m)、茶臼山(2,006m)、牛伏山(1,990m)、鹿伏山(1,977m)、武石峰(1,973m)といった
峰が連なる。
日本百名山といえば、そのほとんどが乗鞍岳とか八ヶ岳のように「岳」がつくか、あるいは富士山とか立山といった風に「山」がつき、「美ヶ原」のように高原を想起するような
名称の山は他にない。その理由は、美ヶ原の呼称の歴史や山の出来た経緯を知ることによって理解できる。
古来、松本周辺の人々はこの地を「東山」または「王ヶ鼻」と読んできていた。それが美ヶ原と
呼ばれるようになったのは、1921年に日本山岳会の会報「山岳」に美ヶ原と記されてからのことである。
訪ねてみれば分かるが、美ヶ原一帯には王ヶ頭や王ヶ鼻、茶臼山といった2000m前後の山が連なっているが、どれも皆なだらかな山ばかりである。それは、美ヶ原周辺一体
が80万年〜100万年前に、火山噴火で粘度の低い溶岩が広がって形成されたためではないかと言われている。
それゆえ、美ヶ原全体が幾つかのピークを持った高原台地といった感じで、どの山に登っても、2000m級の山に登ったという感じがしない。周りには、穂高岳や北岳、乗鞍岳
といった日本を代表する険しい北アルプスの山々がそびえているので、なおさらにその感が強い。
とはいっても、12月に入ると、最高峰「王ヶ頭」(おうがとう)の山頂にある、王ヶ頭ホテルや山の家に行くには、松本駅に迎えに来てくれる専用車でなければ登れない。今年の冬には1週間ほど滞在して北アルプスの雪景色を堪能してこようと思っているので、その節には、冬山の景色を紹介出来たらと考えている。
こうした平坦な台地状の地形ゆえに、山頂付近は平安時代より放牧地として利用されてきたようで、今から100年ほど前、1909年に本格的な牧場と
なって以来、現在に至るもなお放牧が続いている。
また、江戸時代には、御岳山(おんたけさん)が展望できることから、御嶽教の山岳信仰の山として訪ねる人が多かったようだ。その後、1903年には頂上に山本小屋が開業し、多くの
一般登山者が訪れるようになり今日に至っている。