ニホンカモシカに遭遇
気温が氷点下10度まで下がった1月7日早朝、ニホンカモシカに会いたさ一心で、凍てつく八ヶ岳山麓へと出掛けた。スリップする足下に気を遣いながら走る八ヶ岳高原ライン、道路脇に設置された気温表示板を見ると、マイナス12度。
清里を過ぎ、標高1500メートルを過ぎた辺りで車を止め、八ヶ岳在住の写真家、桑島献一氏に教えて頂いた、カモシカ出没の可能性の高い場所まで歩いていく。南極や北極で使った保温の効いた長靴を履いているものの、雪の深さが40センチを超しており、重い三脚とリュックを背負うと、歩くのが相当こたえる。
このエリアの土手には、アメリカ・ケンタッキーグラスが生えているためカモシカの出現の可能性が高いのだという。三脚を据え、ひたすら待ち続ける身に、凍てつく寒さが殊の外こたえる。待つこと1時間、突然、ニホンカモシカがその勇姿を現した。
毛並みは褐色と言うより、黒褐色に近く、角の生えたその姿は威風堂々としていて、鹿と言うより
子牛に近い印象だ。大作栄一郎氏によると、日本鹿はシカ科であるが、カモシカはウシ科であるという。なるほどと思わずうなずく。道理でニホン鹿には雄しかない角が、カモシカには両方生えている。
急斜面でアメリカグラスの枯れ草を食べ始めた。ニホン鹿と違い天然記念物に指定されていて捕獲の心配がないせいか、私の存在を認めても逃げる素振りがない。お陰で慌てずにカメラに収めることが出来る。
念願を果たして、牧場牧場へと戻り、付近を散策しながら周囲の景観を写真に収める。南アルプス、富士山、八ヶ岳を一望する牧場の高台に立つと、周囲はまさに白銀の世界、絶景かな絶景かなである。
残念ながら、私にはこの見事な景観を読者に伝える腕がない。こうした素晴らしい世界を見るたびに若い頃写真の勉強をしてなかったのが悔やまれる。しかし今更悔やんだところでどうにもならない。
読者には、つたない写真であるが、白銀の世界の一端を垣間見て頂くしかない。