全面凍結の諏訪湖を渡る神々

 
  長野県南部の諏訪地方にある諏訪湖が全面凍結し、「お神渡り」(おみわたり)と呼ばれる現象が発生した。

お神渡りとは、諏訪湖が全面凍結する際に、湖の中央部の氷がせり上がって氷の山が走る現象である。昔から、諏訪の人々は、それを神々が湖を渡った跡だと信じ て「お神渡り」と呼んできた。

というのは、諏訪には有名な「諏訪大社」があるが、その上社(かみしゃ)本宮と下社(春宮・秋宮)が諏訪湖を挟んで南北に分かれているため、この時期に、神々が氷結した湖上を渡って行き来をするのだと 、考えられていたからである。

お神渡りが出来るには、まず湖が全面凍結しなければならない。それには、水温がマイナス10〜12度ぐらいの日が4日ほど続き、その間、強い風が吹かないことが条件 となる。近年、温暖化と水の汚染化によって、こうした条件が整わなずに、「お神渡り現象」 が発生しない年が多くなってきていた。現に昨年も、お神渡りは見られなかった。

また、すべての条件が整い氷の筋が出来たからといって、それだけで「お神渡り」が発生したというわけではない。諏訪市にある八剣(矢剣)神社の宮司や総代の人々が、せり上がりの氷の山の高さや、筋がどこからどこへ向かっているかなどを検討した上で、 「お神渡り」として認めるかどうかを決定するのだ。今年は、1月末に氷の筋が出来上がり、2月1日に「お神渡り」の判定が下された。 

 

 
 

 
           「お神渡り」のチェックをする
      八剣神社の宮司と総代の人々

 
 「お神渡り」として認められる三つのコース

私の撮影した写真@は、船渡川から下社春宮に向かう
Aのコース

 

 

  私も子供の頃、両親から「お神渡り」の話は聞かされていたが、 この目で見るのは、今回が初めてであった。上社側の湖岸から眺めると、盛り上がった氷の山が下社春宮(しもしゃはるみや)に向かって連なっている姿がくっきりと見えた。(写真1)

土地の人に話を伺うと、今よりは一段と寒さが厳しかった昔は、せりあがった氷の山はもっと高く、湖岸を散策すると、バリバリという氷の膨張する音が聞こえたという。数キロ先へと連なるその雄大な氷の山筋を眺めていると、古人たちが、神々の渡った跡と考えたのもうなづけるようであった。

諏訪湖の一角にも、コハクチョウが飛来する場所があって、たくさんのハクチョウやカモたちが集まっていた。氷上で羽を休めるコハクチョウの姿には、犀川 (さいかわ)とは違った寒々とした雰囲気が漂っていて、冬の情緒を醸(かも)し出していた。

 

 

 

 

 神渡りが南北に走って
 いる

 

氷上のコハクチョウ

着水する
コハクチョウ

白氷とのカルガモの赤い足との
コントラストが艶やかだ

 

 

コハクチョウの上空を、
鳶(トビ)が気持ちよさ
そうに旋回していた。

 

寒々とした凍結の諏訪湖

コハクチョウと鴨たち

コハクチョウの羽を広げた姿は
美しい

 

 

 
   

上空を舞う鴨の一群

 

氷結した湖面の彼方に
白雪に覆われた
八ヶ岳連峰が見える。