7月18日、関東・甲州地方の梅雨が明けた。今年の梅雨は激しい寒暖と乾期と豪雨が繰り返された、異常な梅雨であった。
世界的に異常気象が今年も続いている。中国では南部で豪雨による大洪水、西部で深刻な干ばつ、被害者の数は4000万人に達している。またヨーロッパでも一昨年の猛暑が再現され、メキシコやカリブ海諸島は大型のハリケーンに襲われている。
梅雨明けの一日
梅雨明け宣言の出たその日、隣町の長野県富士見町にある井戸尻遺跡公園を訪ねた。公園の水沼に咲く蓮(はす)やスイレンが見頃で、観光客に目を楽しませてい
る。
十数年前、東京大学の大賀一郎博士が千葉県検見川の縄文時代遺跡から発掘された蓮の種を、発芽させることに成功した話を記憶している方もいるだろう。井戸尻公園にはその蓮
からとった2代目の種がまかれ、「古代蓮」が「大賀蓮」(おおがはす)と名付けられて咲いている。
蓮の花の命は短く、5〜6日しかない。開花から満開までの様子が興味深い。
開花した当日は2時間ほど咲いた後、朝9時頃になると花びらを閉じてしまう。翌日は10時頃、翌々日は11時頃と開花している時間を少しづつ延ばしていく。ところが、4日目になると花びらは開いたまま
で閉じることはない。その後、3〜4日すると花びらは散ってしまう。
乱舞するトンボ
1万年前の縄文時代の姿そのままに咲く古代蓮の上を、近頃あまり見れなくなった赤トンボとシオカラトンボがツガイを求めて飛び交っていた。
「ショウジョウトンボ」
トンボたちにとってこの沼は居心地がよい
らしく、いろいろな種類のトンボの姿が見える。まるでトンボの楽園のようだ。
家の周りで見る赤トンボ(「ナツアカネ」や「アキアカネ」の雄)と違って、ここの赤トンボは鮮やかな朱色をしていて、本当にきれいだ。「夕焼け子やけの赤トンボ
・・・・・・・」、子供の頃に追いかけた「ショウジョウトンボ」の姿を久しぶりに見ることが出来た。
沼辺を注意して見て歩くと、トンボが羽化
(うか)した後のヤゴ(抜け殻)が立草にくっついて残っている。昨年の夏に産卵された卵はサナギになって冬を越す。1年経って初夏にヤゴから抜け出すのだ。
ムギワラトンボの「ヤゴ」。 セミの抜け殻によく似ている
ヤゴの大きさは3〜4センチほどしかない。しかし抜け出たばかりの幼いトンボを見ると8〜9センチも
ある。飛び出た瞬間に倍以上の大きさになるのだ。羽化したばかりの赤ちゃんトンボの「羽」は透明で、「胴体」も黄金色で透き通っているように見える。
小さな子供達に、こうした昆虫の生態を見せてやりたいものだ。小さい頃から日常的に、野鳥や小動物の誕生や死を目にしていたら、学校で改めて「命の尊さ」など教えなくたって、連続する少年少女の痛ましい殺傷事件など起きずにすむだろうに。
遠くに離れている孫たちに思いがはせる1日であった。