高山から更に70キロ、除雪はされているものの、一時も気を抜くことのできない山道を2時間半ほどかけて、白川郷に着く。途中から降り出した雪が本格的になり、あたり一面雪景色である。雪の中の合掌造りを撮るにはもってこいであるが、カメラに未熟な私には荷が重過ぎるようだ。
岐阜県と富山県にまたがる飛騨山地。その山間、庄川の渓谷沿いに散在する村落は、日本有数の豪雪地帯として知られている。戦後、電気や道路が整備されるまで、冬には孤立してしまう秘境であった。
急勾配の茅葺き屋根を特徴とする合掌造りは、自然に逆らわないよう工夫された昔の人たちの豊かな知恵の結晶である。横木と縦木を留めるのに柔軟性に富ん木材を用いて、釘は一本も使わずくさびや留め栓を多用していて、強風に吹かれても大雪が積もってもびくともしないという。
合掌造りの屋根裏は多層になっており、江戸時代から養蚕の作業場や食糧の保存所として使われていた。見上げるばかりの高さの大屋根は、30年に一度、葺き替えられ、一軒でトラック20台分の茅が必要とされるという。村の人々は、今も様々な面で協力しあって伝統文化を守っている。
今日は、ライトアップ最初の週末ということもあってか、駐車場は50台を越える大型バスが並び、狭い村中に観光客があふれている。白川郷全体を見渡せる小高い丘の上に登ってみたものの、大粒の雪で視界が悪く、撮影はなかなか難しそうだ。
雪の舞う村の中を散策しながら「雪景色の合掌造り」を撮ろうとするものの、あふれるような人の波にもまれて、いいアングルが確保できない。それでも何とか撮影を終えて、ライトアップされる家の前で待機する。6時のライトアップにまだ2時間もあろうというのに、私の周りは三脚が林立していっすいの余地もない位だ。
定刻前、小降りになりだした雪の中でライトが点灯されると、薄暮の白川郷の山間に、ライトアップされた合掌造りがくっきりと姿を現し、幻想的な雪景色が浮かび上がった。