厳寒の王ヶ頭を訪ねる

昨年の夏、美ヶ原を訪ねた際の写真を掲載した「美ヶ原高原」と「車山」のホームページをご覧になられた方は、美ヶ原高原から眺めたテレビ塔の立ち並ぶ「王ヶ頭」(おうがとう)の景色を記憶しておられることと思われる。

今回は、その王ヶ頭を訪ね、山頂から白銀に覆われた北アルプスや南アルプスの姿を展望し、霧氷に覆われたダケカンバの姿を写真に収め ようというわけである。しかし、長く滞在できるわけではないので、希望が叶うかどうかは天気次第である。
 

 

標高2000mの王ヶ頭へ登る一般道は、12月から4月まで雪のため通行禁止になっている。そのため、山頂にある王ヶ頭ホテルに行くには、 松本駅から出ているホテル専用の送迎バスを利用することになる。

今年は暖冬であるため、山頂に向かう途中もほとんど雪がない。それでも1700mを超す辺りから雪道となり、気温も一気に下がり始める。 松本駅からおよそ1時間半でホテルに到着。驚いたことに、こんな不景気だというのに、ホテルはほぼ満席状態である。

その訳は、標高2000mを超す山頂まで、車で行けると言うところは他に例がないからだ。それに、山頂に建つ「王ヶ頭ホテル」は、なかなか素敵で朝夕の食事も十分楽しめるし、浴槽から眺める北アルプスの景観は最高だ。こういった特色を持つホテルは、景気、不景気はあまり関係なさそうである。

それに、日本百名山のうちの40を越す山々を一望できる360度のパノラマは、なんと言っても最高の目玉だ。私の今回のお目当ては、霧氷を写真に収めることであるが、どうなることやら。なにしろ、こればかりは、天候次第。運を天に任せるしかない。

霧氷が発生するには、適度な湿度と寒さが必要である。つまり、夕方から夜半にかけて霧がかかることと、早朝に氷点下10度以下になること が条件である。標高が2000mを超しているので、まず気温は大丈夫だと思われるが、問題は夜間に雲が流れたり、霧がかかるかどうかという点である。

ホテルの人にお聞きすると、今年の冬は晴天続きで乾燥しているため、1月に入ってから霧氷に出会える日は、数えるぐらいしかなかったとのことであった。

原稿書きと、講演会の合間を縫っての撮影行であるため、天気予報を見て日を選んでいるわけにはいかない。運を天にまかせての旅立ちである。この日、あいにく家を出る頃は晴天 。しかし、山頂に着くと曇り空に変わっていた。さらに、夜になると、少し小雪が舞い始めた。ひょっとすると待望の霧氷を見られるかもと、夢路を急ぐ。

翌朝、5時半起床、八ヶ岳連峰から昇る「御来光」を見るためだ。部屋の中は暖かいが、窓の外はいかにも寒そうだ。防寒具に身を包んで外に出ると、ホテルから少し離れた展望のきく場所には、すでにカメラの三脚が立ち並んでいる。写真愛好家には朝寝坊はいないようだ。

気温は氷点下15度ぐらいだろうか。ただ、風があるせいか、体感温度は20度近くに感じられる。八ヶ岳での冬の野鳥撮影や、南極、北極の旅でかなりの寒さには慣れているが、それでも ここまで冷え込むと、顔をマスクで覆わないと皮膚が痛くなってくる。それより問題はカメラの方である。

デジカメは電池が命、この電池が一番弱いのが寒さである。カメラの周りにホカロンを貼り付け、さらに厚手のカバーを掛けておかないと、あっという間に電池切れで作動しなくなってしまう。それに、手袋なしで三脚を立てたり、カメラのセッティングをしていると、手がこちこちになって シャッターを押せなくなってしまうので、指先に穴があいた毛糸の手袋は欠かせない。

待つこと30分、東の空が少しづつ赤みを増し始めた。振り返ると、ホテルの上空、西の空には満月状の月が浮かんでいる。6時40分、見事なご来光が始まった。しばらくすると、突然、太陽に照らされ辺りの雪が朱色に染まった。わずかな時間であったが素晴らしい景観であった。(次回につづく)
 

 

   



 

 

6時40分日の出と同時に
王ヶ鼻一面が朱に染まる

 

王ヶ頭山頂付近
にはテレビ塔が
立ち並んでいる

日の射し方によっては
雪がコバルトブルーに
染まる時がある

霧氷

 



 

 

時間が経つと
あっという間に
霧氷が熔けてしまう

 

雪景色

雪景色

雪景色

 

 

北アルプス連峰

 

雪景色

噴煙を上げる浅間山
(2568m)

北アルプス連峰