先週、初夏を迎えた北海道に撮影に出かけて来た。今回の撮影の一番の狙いは知床半島の沖合に姿を見せるシャチであった。これまでに知床半島には何回か訪れており、2年前の2月末には凍てつくオホーツクの海に浮かぶ流氷とオオワシ、オジロワシの撮影に出かけた。その様子は「厳寒の知床半島撮影の旅」で報告した通りである。
海の撮影は何といっても天気が大事。青い海でなければ絵になりにくいからである。天気予報で25,26,27日が好天だったので、24日の午後に出発することにした。今回は札幌講演会に参加され、徳之蔵にも何度もご来館頂いている佐々木様にお力沿いをお願いすることにした。
飛行便が遅れたため釧路空港に着いたのが夜の8時過ぎ。早速、迎えに来て頂いた方の車で、目的地・羅臼(らうす)に向かう。羅臼は知床半島のほぼ中央部の南側に面した港町で、釧路から車で約3時間。前回、オオワシを撮影したのと同じ港町である。
前回のオオワシの撮影の乗船時間は早朝の5時。凍てつく寒さの中での乗船であったが、今回は9時、しかも、北海道が記録的な暑さに見舞われようとしているタイミングだっただけに、前回とは大違い半袖姿。しかし、乗船して走りだすと海風で気温が一気に下がるため、持参した厚手のコートを着ての撮影となった。
問題はシャチの姿をより良い距離で見ることが出来るかどうかである。見慣れた羅臼連山の姿を見ながら3分ほど進んだころ、添乗員の方が国後島の方向にシャチの姿を見つけたが、何しろ遠い。400ミリの望遠レンズでもやっと姿を確認出来るだけで、とても絵にはならない。なぜもっと近づかないのかと思っていると、そこから先はロシアの領海であるため、これ以上進めないのだという。
羅臼から国後島までおよそ25キロ、今いる位置は12・5キロ離れた国境周辺でこれから先へは進めないのだ。船長が運が良ければシャチたちが羅臼側に来てくれるかもしれないので待つことにします、とアナウンス。そんな状態が30〜40分続いた。
幸運を祈って待っていると、望遠レンズに映るシャチの姿が次第に大きくなりだした。そして近づいて来たシャチの数は思っていた数よりだいぶ多そうだ。船長もその数の多さに驚いておられるようで、今日は最高のチャンスですよ!と興奮気味。シャチたちが次第に近づいてきた!!
しかし、いざ撮影となるとそう簡単にはいかない。なにしろ動きが速いうえに海上に姿を見せている時間が短いため、絵になる瞬間を捉えるのが難しいのだ。それにいったん視界から消えると再び浮かび上がってくる場所を捉えるのが大変で、カメラをあっちこっちと向けて悪戦苦闘。それでも何とか絵になる瞬間が何枚か撮れたのでやれやれであった。
船長が言っていたように数多くのシャチの姿を身近で見られるのは稀のようで、その後の2回の乗船時には遠くに浮かぶ姿しか見ることが出来なかった。その代わりに、クジラと海鳥の撮影が出来たのは幸いであった。なかでも数百羽の海鳥・ハシボソミズナキドリが一斉に舞い立つ姿は迫力があった。
この後の美瑛と富良野の旅は次回でお伝えすることにする。 先ずはオホーツク海のシャチとクジラ、海鳥の姿を見て頂き心を癒して頂きたい。