海鳥の楽園・天売島へ渡る
羽幌港から「羽幌沿海フェリー」に乗って約30キロ沖合の天売島(てうりとう)に向かう。途中、たくさんのカモメが船について飛んでくる。観光客が手に持つお菓子がお目当てのようである。焼尻(やぎしり)島経由でおよそ1時間半の船旅である。
天売島はオロロン鳥(ウミガラス)やウミネコ、ウトウなど100万羽の海鳥が生息する島として知られている。人間が住む遥か昔から海鳥が暮らす野鳥の楽園だった天売島。海鳥の中には人が住めないような無人島で繁殖する鳥が多いだけに、ここ天売島は珍しい海鳥たちの営みを目にすることが出来る貴重な島となっている。
天売島は断崖絶壁が続く西側と、標高が低く平坦な東側とに分かれている。海鳥たちは、西側の海岸沿いに住む人間が立ち入ることが出来ない崖や岩棚、土中や草むらなどそれぞれの種にあった環境に巣を作り、繁殖を行っている。西側と東側に分かれた地形や険しい崖を持つ島の形状が、人間と鳥との棲み分け、鳥同士の棲み分けを可能にし、今もなおそれぞれの共生が続いているというわけである。
到着後、レンタカーを借りてさっそく鳥たちの観測スポットを回る。島の周囲はわずか16キロほど。最初に訪れたのが赤岩展望台。
ここは60万羽といわれるウトウの棲息地でもある。残念ながら6月にヒナが孵って旅立って
しまった後で、その姿はわずかしか見ることができなかった。しかし、展望台周辺の砂地や地面を見ると、そこには数え切れないほどにはたくさんの巣穴が掘られており、ピーク時にどれほど多くのウトウ達が生息していたかが想像できる。
展望台から眺めると、眼下には48mの高さの垂直な岩・赤岩が聳え立ち、その上空をウミネコやヒメウが飛び交っている。周囲の海はコバルトブルーに輝いており、覗き込んでいるとその美しさに引き込まれて展望台から飛び出してしまいそうである。赤岩の波打ち際にはゴマフアザラシが生息しているようで、うるさいほど鳴き声が聞こえていたが、岩陰に隠れているのかその姿を見ることはできなかった。
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天売島に棲む海鳥たちの居場所は、上の図のように棲み分けられている
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オロロン鳥(ウミガラス)
この島一番の呼び物はこの島にしか生息しないウミガラスである。この鳥はオロローンと鳴くことから「オロロン鳥」と呼ばれて親しまれている。留萌から稚内に至る海岸沿いの国道を通称「オロロン街道」と呼んできたのは、街道沿いの海上にたくさんのオロロン鳥が飛んでいたからである。しかし、今は繁殖絶滅危惧種に指定されており、その姿はめったに目にすることは出来なくなってしまっている。
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岸壁にたたずむオロロンチョウの夫婦
スタイルがペンギンによく似ており、夏羽は頭部から頸部、
上面は焦げ茶色で、胸部・腹部は白く、脇腹には黒褐色
の横斑があり、目の後方には白線がある。成鳥の冬羽
は顔が白く、目の後方に黒い線があり、若鳥と似ている。
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半世紀前の1963年には8000羽もいたそうだが、昨年確認された数はわずか18羽。このところ少しづつ増えてはきているようだが、まだまだ安定した数ではないようだ。繁殖絶滅危機の要因ははっきりしていないが、漁網による混獲とオオセグロカモメやカラスの増加によるヒナと卵の捕食ではないかと言われている。
オロロン鳥を繁殖させようと、 1990年頃から繁殖地に仲間の姿をした模型を置いて呼び寄せる取り組みをしたり、鳴き声を流したりして
きたがなかなか成果が現れず、ようやく昨年2011年にその成果が実り、7羽のヒナが巣立ったという。来年は繁殖期の6月にもう一度訪ねてみたいと思っているので、その時にはこの目で是非その姿を見てみたいものである。
この後、海鳥観察舎と観音崎展望台を 周り、ウミネコの声を聞きながら海に沈む夕日を観察。明日は早朝から紺碧の海を背にした赤岩や切り立った断崖絶壁の展望を見てみたいと思っている。なんとか良い天気になって欲しいものである。
次回に続く
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島に向かうフェリーを
追いかけるように飛揚
するセグロカゴメ @
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A |
B |
C |
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オロロンチョウの像
天売島の港には
オロロンチョウの
像が建ち、その
上にオオセグロカ
モメがとまっている
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千鳥ヶ浦園地
からの展望 @ |
A 手前に見える
のがカブト岩
海上をセグロカモメ
飛んでいる |
ウミネコ
崖の上の草原に集
まって巣を作る。
猫によく似た鳴き声
で鳴くためこう呼ば
れている
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