恐竜博物館を訪ねる
早朝7時、早くもメキシコシティーに向かう幹線道路は混雑が始まっていた。しかし、郊外に向かう我々にとって渋滞は他人事、大型のワンボックス・カーは順調に疾走し、久しぶりに快適なドライブを楽しんでいた。
シティーから北西に約180キロ、車でおよそ3時間、そこにはアカンバロという地味だが歴史の古い田舎町がある。我々が目指すのは、その町の小さな「ヴァルデマール・ユルスルート博物館」である。
この片田舎の小さな博物館には、大英博物館やルーブル美術館も足元にも及ばない品々が展示されているといったら読者は驚かれるだろうか。そこには、イカのカブレラ博物館に匹敵する驚くべきコレクション、人間と恐竜との共存を示す恐竜土偶など、人類史を書き換えることになる貴重な品々が展示されているのだ。
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そんな博物館も、外来の訪問者が少ないせいか案内標識が少なく、なかなか探し当たらない。仕方なく、アカンバロの市役所に立ち寄り、場所を教えて頂くことになった。市役所から4〜5分、訪ねた当てた博物館はこの町の建物にしては、瀟洒(しょうしゃ)で内部もこぎれいに飾られていた。
前市長の肝いりで2000年10月に完成したばかりの館内に入ると、早くも増築と内部の改装が行われているところだった。 |
日本からの来訪を告げ、館長室へ案内してもらうと、年の功40歳代の好感の持てる男性が「私が館長のルベン・オルベラ・アルマンサです。遠路ようこそおいで下さいました」と暖かく迎え入れてくれた。
挨拶を交わし部屋を見渡すと、館長室の大半は所狭しと段ボール箱が積み上げられ、まるで倉庫のようになっていた。館長はそれらの段ボール箱を指さしながら、これらはみな今増改築している部屋に展示を予定しているものばかりですと、話してくれた。完成したばかりなのにもう手狭なんですかと尋ねると、陳列物の数が多すぎて、今のままでは所蔵品のほんの一部しか展示できないのです、とのことであった。
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所有されている発掘物はどのくらいあるのですか?
「2万4000点ほどです。ですから増設後もすべての品を展示するというわけにはいきませんけどね」、館長は半ば苦笑しながら答えられた。
案内書を読むと、ここに展示されたり保管されているコレクションのすべてが、実業家ヴァルデマール・ユルスルートによって発掘されたもので、1964年にお亡くなりになった後、ご子息がアカンバロ市に寄贈したものであると書かれていた。博物館の名前が「ヴァルデマール・ユルスルート博物館」となっているのは、発掘者の名前を永久に残そうとする市側の配慮だったようだ。
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館長によれば、当初、市に寄贈されたときには、3万3000点に及んでいたコレクションがいつの間にか破損や不法持ちだしによって、いまは2万4000点にまで減ってしまっているという。市が博物館作りを決断したのもそのためだったようだ。
(現在執筆中の著書より)
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先ずは、恐竜図鑑に載っていない奇妙な恐竜土偶を見て頂くことにしよう。 |