一旦、館長室を出た我々は、旧館の展示室へと案内された。
ショーケースの中には、ブラキオサウルスやティラノサウルス、ステゴサウルスなどジュラシックパークでお馴染みの恐竜が並んでいる。それぞれの恐竜の特徴をこれほどに見事にとらえた姿を見ると、これらが想像で作られたものでないことは確かだ。
ケースの中には、我々がよく知っている恐竜とはまったく異質なタイプもある。それらをよく見てみると、学者が分類している「類」と類」がまたがったような種があるようだ。
恐竜の発掘調査が始まってから、まだわずか一世紀半、その数もそれほど多くはない。発掘されたものの中でも、その姿を完全に復元できるものはさらに少ない。そう考えれば、剣盤つきのティラノサウルスやブロントサウルスがいてもおかしくない。
明日の新聞に、新しく発見された新型恐竜として、それらの恐竜の姿が掲載されるかもしれない。事実、最近の恐竜図鑑を調べてみると、肉食恐竜の獣脚類の頭や背中にも「角」や「とさか」、剣盤状の「うねり」などを持ったものも発見されているようだ。
ここで思い出すのは、イカの線刻石の中にも、「類」のまたがるアカンバロの土偶によく似た奇妙な恐竜の姿があったことだ。そこでも述べたが、この種の恐竜が描かれていることを考えると、イカの石やアカンバロの土偶を作った人々が、恐竜図鑑を参考しなかったことは明らかだ。もしも、彼らが金儲けのために土偶を作ったり石に彫ったとしたら、信頼性を疑われるような種類の恐竜をわざわざ作るはずがないからである。
展示されたコレクションを眺めていくと、絶滅種である恐竜や魚竜、翼竜の他に、猿人や半神半獣、人間の容姿はしているものの、現代型人類とはまったく異なる奇っ怪な人型土偶、さらに馬、猿、象、サイ、リャマなどの現在でも目にすることができる動物など、そのバリエーションの豊富さに驚かされる。
それらの多くは、粘土細工や焼き物だが、中には、黒曜石やヒスイ、花崗岩といった堅い石材に彫られた彫刻石もある。発掘者のユルスルートが「私は未知の古代文化を発見したのだ!」と、そう確信した気持ちが分かろうというものだ。
(『恐竜と共に滅びた文明』より)