この日も早朝4時に宿を出て120キロほど離れた上士幌(かみしほろ)にある「めがね橋」を目指す。
昨夜見た美しい「夕焼け空」は西から東の空に位置を変え、まぶしいばかりの「朝焼け空」に変身。
広大な十勝平野を朱色に染めて昇る太陽は、実に見事である。思わず車を止めて見とれてしまった。龍神様はなんとも粋な計らいをして下さるものだ。
目指す「めがね橋」というのは、かって士幌線(しほろせん)で使われていたタウシュベツ川に架かる橋梁の別称で、昭和11年から30年にかけて建造されたものである。それは、北海道の厳しい自然条件の中で建設された大きな「めがね橋」として北海道で最も古く
、他の「めがね橋」のお手本となった橋梁でもあった。昭和62年に帯広〜糖平間の運行廃止とともに、鉄道橋としての使命を終え現在に到っている。
その後、老朽化が進み崩落の危険性が出てきていることから、
残念ながら、ここ1〜2年が見納めになりそうである。タウシュベツ川は「めがね橋」の少し下流で堰き止められ、現在ダム湖として使われている。
そのため貯水量が多い
時には、橋梁は下半身が水に浸かって上部の歪曲した部分が水面に映り、文字通り「めがね橋」
の姿を見せてくれる。また、積雪に覆われた姿もなかなかの絵になることから、写真家のあこがれの風景となっている。
私もそんな冬の「めがね橋」を撮ろうと思っていたところ、記録的な大雪で家を出ることが出来ず、とうとう春を迎えてしまった。そこで、雪解け水に浮かぶ
「めがね姿」の橋を撮れたらとこの時期を選んでみたところ、今年は例年にない雨不足でタウシュベツ川は小川状態。 目の前に現れた陸橋は丸裸、まるでローマ時代の水道橋のようであった。
しかし、こうした姿もまた朽ち果てた情景が醸し出されて、なかなか風情があり、絵になる風景であった。読者の目から見て、いかがだっただろうか?
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