8月24日(土)
今日は朝から昨日の曇り空が嘘のように青空が広がっている。ポセイドンのスタッフがコマーシャル用の写真撮影のためヘリを飛ばし撮影班を氷上に送り始める。
我々も急いで最上階のデッキに上がり、極点では珍しい晴天下の輝くばかりの氷床を撮影する。聞くところでは北緯80度を超してからの青空は滅多にお目にかかれないようだ。どうやら我々は大変な幸運に恵まれたようだ。
砕氷しながら進むヤマル号と地平線一杯に広がる氷床、それに紺碧の青空。この三点セットがそろった今日は、写真撮影には願ってもないチャンスだ。
午後、写真家の島内先生の写真教室が開かれた。普段疑問に思っていることや船上での撮影についていろいろと教えて頂いた。それにしても先生は船内や甲板上を絶えず飛び回っている。先生の姿を見ていると、素晴らしい写真の陰にはそういった努力があることが実感される。
夕食前、艦長に招かれて艦長室を訪ねる。興味深かかったのは、船が進むのに時間がかるのは、氷の厚さだけが原因ではないということだ。薄い氷でも、新しくできた氷は粘着力があって船首の鋼鉄にまとわりついてしまうため、砕氷するのに時間がかかるのだという。
因みに冬場に極点近くにできる氷は4〜5メートル。このエマール号の砕氷能力は氷の
質にもよるが、4メートル位が限度だというから、いつでも極点まで行けるというわけではないようだ。また、原子力砕氷船は原子炉で炊かれた高温の水を冷やすことが絶対条件のため、北極圏や南極圏の冷たい海水のエリアだけしか航海ができならしい。そのため「南極」へは途中暖かい水温の赤道を越えねばならないため、自力で航海することは不可能ということになる。
夕食は島内先生夫妻と舟津氏と同じテーブルになり、様々な話に花が咲く。それぞれの分野のスペッシャリストと話すのは楽しいものだ。
就寝前の20:00船の位置は北緯89度15分。いよいよ極点まであとわずか。到達時に目を覚ましておこうと、早めにベッドに入る。