8月27日(火)
親子連れの北極熊
朝のレクチャーが始まろうとした時、ホッキョクグマが現れたとのアナウンスがあり、講義を中止しデッキに出る。やや離れているが珍しいことに親子ずれの姿が見える。
2月に生まれたばかりの赤ちゃん小熊が、母親に寄り添って戯れるしぐさがなんとも言えないほど可愛らしい。
子連れの場合は警戒心が強く船に近寄らないために、目撃するケースが少ないようだ。我々は幸運に恵まれたと言うことになる。
クマの親子はしばらく我々の様子を眺めていたが、間もなく立ち去り始めた。船が少しスピードを上げて追いかけると、今度は早足で逃げ出す。親の後を必死に追う小熊の姿がまた愛くるしい。
遠ざかる親子にサヨナラを言って、船は再び進路を南へと向ける。
レクチャールームに戻り、ビクトルから「フランツ・ヨーゼフ島の探検の歴史」の話を聞く。
我々が北上中に立ち寄ったヨーゼフ島は、スピッツ・ベルゲン島など西側の島々の発見や探検が17世紀始めに行われたのに比べると、遙かに遅く最初にオーストリア・ハンガリー共同探検隊によって発見されたのが、1873年のことであった。
メキシコ暖流がスカンジナビア半島の海岸沿いに流れ込んでいるため、ノールウエー沿岸の海面は1年中氷結することがなく、探検が進んでいたようだが、フィンランド寄りの海上は暖流の流れが弱まってしまい、北緯80度近くになると夏でも流氷が消えず探索を難しくしていたのだという。
それにしても19世紀、あやふやな海図と小さな木造船を使っての探検はさぞかし大変であったことだろう。長期にわたる探検や越冬中に倒れた人々のほとんどが、今で言う「ビタミン欠乏症」であったらしいが、ビタミン剤の携帯が容易な今では考えられないような話である。
明朝は行きに立ち寄ったフランツ・ヨーゼフ島の島々の間を航海することになる。島の探検史の話を聞いた後で訪ねる島々は、また違った感慨を持って眺めることになるに違いない。
再び北極熊の出現
午後再びホッキョクグマ出現のアナウンス。今回は1階のデッキに出て眺める。今までになく船の近く、3時の方向に1頭の親熊が見える。スタッフの話によるメス熊だという。
今回はしばらくの間、船の近くにいてくれたので満足のいく写真を撮ることができた。それでも望遠レンズを持ち合わせていない周りの人たちは、ほとんど点のようにしか写らないらしく、残念がっている。
私のカメラはデジタルのため、400ミリの望遠レンズをつけると640ミリの超望遠となる。迫力ある姿を撮るにはどうしてもこれぐらいのレンズは必要のようだ。
それにしても、航海中三度もホッキョクグマに遭遇出来たのは幸運であった。このようなことは長年ツアーを組んでいるスタッフにとっても珍しいことらしく、興奮と喜びの歓声が上がっていた。
それでは、ホッキョクグマの姿をじっくり見て頂こう。