暗雲漂うかっての覇権国家・英国の未来
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「離脱協定案」の否決によってメイ首相の顔から笑みは消えていった。 |
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昨日の「世界が注視する英国とトルコ」でお伝えした英国のEU離脱問題、日本時間の本日13日早朝、英国議会下院で、これまでEUと協議してきた「離脱協定案」についての採決が行われ、賛成242、反対391の圧倒的多数で否決された。
つまり、英国は離脱に関してEUと合意した内容では、受け入れられないということである。
反対の主な理由は北アルルランドの国境を巡る問題であるが、この点については後日、改めて解説することにする。今回の議会での否決によって、英国に残された道は、「合意なき離脱」を選択するか、29日に迫った離脱日をEU議会で延長してもらい、その間に改めて離脱協定案をとりまとめるかのいずれかとなった。
この二つの選択肢を決めるのは13日と14日の議会。もしも13日の議会で「合意なき離脱」案が否決されたら、翌14日の議会でEUに対して離脱延期を求めるか否かの採決となる。合意なき離脱が回避され離脱延期が可決されたら、舞台は21日のEU首脳会議へと移り、離脱延期についての審議が行われることとなる。
すべてがうまくいったとしたら、離脱は数ヶ月ほど延期され、改めて英国とEUとの離脱に関する交渉が始まることになるわけである。しかし、昨日の「離脱協定案」の否決を伝えられたEUのトゥスク大統領は「離脱延期については、英国が理にかなった申し入れをしてくれば27カ国は検討する」とこれまで通りの厳しい発言をしている。
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承認については27カ国すべての賛成を必要とするだけに、承認が得られるかどうかは不確かだ。もしも承認されたとしても延期された数ヶ月間に英国の要望する通りの協定案が締結されるかどうかは定かでない。むしろ否定的な見方が多いのが現状だ。
問題はこうした動きに対して英国に本社を置く各国の企業が英国離れを検討していることである。合意なきままの離脱となればもちろんのこと、離脱延期となったとしても、先行きを見通して、多くの企業が本社や工場をEU域内に移す動きが加速される可能性が大きい。
先月、ホンダが英国での自動車生産から撤退することを発表。その波紋が英国全土に広がり大きな波紋を呼んだことはご承知の通りである。
日産自動車は既に次期スポーツ用多目的車の生産を取りやめており、パナソニックやソニーなど家電メーカも欧州本社をオランダに移している。また、銀行もEUの免許を失うことになるため、ロンドンの金融市場からの撤退が加速することになりそうである。
「合意なき離脱」は言い方を変えれば「秩序なき離脱」である。そして、それが及ぼす影響は想像以上に大きなものになるはずだ。私は期限が延長されたとしても最終的に「合意なき離脱」となる可能性は大きいと考えている。それは、かっての覇権国家であった英国の衰退を世界に示すことを意味している。
こうして英国が、やがては米国が覇権国家の地位を失い、世界はアセンションを前に、混乱の渦に巻き込まれることになりそうである。
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