船内の様子
20:00の夕食の後、持参した船酔い薬を飲む。夜半過ぎにドレーク海峡(Drake
Passage)に入る。
私のキャビン(船室)は5階で、重いドアーを開けて中にはいると、5−6畳間の細長いに部屋にベッド、トイレ、洗面所が収まった感じで、机、椅子、書棚、クローゼットそれに冷蔵庫も備え付けられており、十分な広さと設備が備わっていた。
窓からは海が眺められるので気分がいい。南極クルーズは、行く先にホテルがあるわけではないので、船が移動とホテルの役割を果たすことになる。それだけに快適なキャビンはありがたい。
船内全体もゴージャスではないが清潔ですっきりしていい感じだ。食道、休憩室、バーは3階にあり、5階にはサウナと図書館が備わっている。食堂以外は24時間いつでも利用できる。図書館には、南極に関する蔵書がおかれており、事前の勉強には好都合だ。ブリッジは6階でここにも24時間自由に出入りが出来る。
船中第2日目 午前中
酔い止め薬の中に睡眠剤が入っていたのか朝7までぐっすり寝込んで、久しぶりに寝起きの良い朝を迎えた。風邪の方も開き直ったせいかどうやら峠を越したようだ。このまま快方に向かってくれるとありがたいのだが。
気になった船の揺れは大したこともなく少々拍子抜けの感じだ。今回で南極が11回目になると言う通訳の野口尚彦氏(北海道出身で大学からアメリカに渡ってアメリカ国籍をもつ地質学者で、学究肌の人には珍しく機知に富んだ大変おもしろい人だ。年齢は私と同年代とのことであった)の話では、こんな穏やかなドレーク海峡(Drake
Passage)は奇跡のようなものだということであった。
野口氏が遭遇した最高の揺れは、48度であったそうだが、そこまでゆくと床と壁が入れ替わったような状態になるそうで、とても食事などとる気分になれたものではないという。「今回のクルーで記録更新を狙っていたんですがねー」と、きつい冗談を言っていた。
6階のブリッジで、海図と計器類を見ながら、明日、どの緯度で何時頃、最初の氷河に出くわすかの「予想コンテスト」が行われた。各自が皆、思い思いの予想表を提出。私は野口氏のアドバイスで南緯64.20度、明朝10:20の予想を立てた。さて結果はどうなることか。
船中第2日目 午後
午後から低気圧の接近で風雨が強まり、揺れも次第に大きくなってきた。左右に揺れながら手すりにつかまってブリッジに上がると、窓越しに大波が船首を洗っているのが見える。世界中の船乗りから恐れられた「魔のドレーク海峡」の一端を垣間見たような気がした。
船内では、南極、亜南極圏の生物や地質学、氷河や海洋学、探検の歴史、写真の撮り方などについて様々なレクチャーが開かれることになっている。講師は、旅行を企画したペリグリーン社のスタッフと通訳の野口氏。午前中「南極大陸の回りの海と海氷」、午後「プレートテクトニックスと動く大陸」について野口氏のレクチャーを受ける。
夜の食事は、食器類がテーブルの上を行ったり来たりで、落ち着いて食事をとる気分ではない。それでも食後しばらくすると、揺れは次第に収まってきた。どうやらドレーク海峡を過ぎたようだ。就寝前にブリッジに上がって海図を見ると、既に南緯62度の南シェトランド諸島(South
Shetland Islands)を通過しており、南極半島に近づいているようだ。
いよいよ明朝には南大洋(Southern Ocean)に浮かぶ氷山を目にすることが出きるに違いない。遠足前の子供の心境で、少々揺れの残るベッドへもぐり込んだ。