自然美の造形
2時間ほど滞在した後大陸を離れ、ソディアックでニッコウ・ハーバーをクルージングする。そこで我々は素晴らしい氷河の眺めを堪能することになる。
青い空と純白の氷河(Glaciers)をいただいた山々、紺碧の海に浮かぶシャーベットブルーの氷山(Iceberg)。いつまで見続けても飽きることのない風景がパノラマのように次々と展開していく。
巨大な円柱が三柱連なって一体となった珍しい形をした氷山が見えてきた。自然の作り出した造形美とシャーベットブルーに輝くその姿に思わず歓声が漏れる。
ソディアックは鏡のような海面を滑るようにして、オブジェの林の如く立ちはだかる円柱の間を縫って行く。
しばらくすると、ゲート状になった巨大な氷河が現れた。太陽に照らされて、薄いブルーから濃紺までさまざまな色に彩られた氷魂は、幻想的な光景を見せている。ゲートの反対側に別のソディアックが回って絵になる光景が現れた。まさにシャッターチャンスの連続だ。
ホエール・ウオッチング
クルージングから戻って乗船後、イヨッフェ号は、船より大きい氷河が幾つも漂流する中を縫うようにして、ザトウクジラとミンククジラが回遊するエレーラ海峡(Errera
Channel)へと進んで行く。
昼食後、いよいよソディアックに乗ってホエール・ウオッチングが始まった。
先行組のソディアックをデッキから眺めていると、早くも潮を吹きながら悠々と回遊するつがいの鯨の近くへたどり着いて、ウオッチングが始まろうとしている。焦る気持ちを抑えて、後続組の私たちクルーもソディアックに乗り込む。
ソディアックでしばらく進むと、3百メートルほど先に潮を吹く鯨の姿を見つけた。ボートはその海域に向かってフルスピードで進む。およそ50メートル圏内に近づくとスピードを落として、ゆっくりと鯨の潜った海域を回り続ける。
しばらくすると、突然目の前に黒い雄姿が浮かび上がる。ソディアックは10メートルほどの距離まで近づき、エンジンを止める。
目の前の鯨が、その巨大な体をピッチング(上下運動)するたびに、ソディアックは激しく上下する。吹き上げる潮が霧状になってソディアックの上に降ってくる。
鯨はピッチングを数回繰り返した後に、頭から潜って二枚の扇子状の尾ビレを立てて、ザトウクジラ独特のあの奇妙な尾ビレ(flukes)よる海面を叩き(The
odd flipper slap)をした後、海中へと潜っていく。
この一連の動作の撮影がはなはだ難しい。足下がままならぬ上に、ソディアックが思うように鯨の方を向いてくれない。体をひねり回してシャッターを押し続けるが、タイミングを計るのが難しくてなかなか思うようにいかない。
それでも何回か観察しているうちに浮上から潜水までの一連の動作のタイミングをつかむことが出来て、ザトウクジラが演じる眼前の雄大なショーを何とか写真に収めることが出来た。
今回は、ニッコーハーバーの幻想的な景観と、エレーラ海峡のザトウクジラの雄大なショーをご覧頂くことにする。