ヤロー島上陸
ピーターマン島から帰船して、一休みした後午後4時、アルゼンチン諸島の一つであるヤロー島(Yalour
Island)へ上陸する。この島は、1940年代イギリスがドイツの潜水艦Uボートの動きを探るための先進基地として利用しており、その後、学術的な観測基地に転用された。
島には、観測基地当時の簡素な建物が記念物として残されており、中には当時の生活用品や観測機器などが一部展示されていた。
ウクライナのベルナッキー基地を訪問
その後、ウクライナの観測基地がある対岸の島に上陸。ここにはソ連時代から観測を続けているベルナッキー(Vernadsky)基地がある。この基地はソ連崩壊後はウクライナの基地として、今も数十人が越冬し観測を続行している。
基地の内部は40年代のイギリスの基地跡を見てきたせいもあって、建物の広さと同時に観測機器類も大分充実しているように思えた。基地内では、立ち寄る観光客用にTシャツや絵はがき、封筒類などの小物を売っていた。2階には隊員用のカウンター・バーがあり、ウオッカの南極氷オンザロックがのどに染み渡った。ウオッカは何年ものか知らないが、氷は少なくとも何千年ものであることは間違いない。
再びルメーア海峡を北上する
乗船後、今回のクルーズの最南端、南緯65度18分から反転してルメーア海峡を北上する。朝と違って帰路は快晴に恵まれ、文字通り「世界一の美しい海峡」が眼前に広がる。氷河に覆われた回りの山々が紺碧色の海に映し出され、南極アジサシやウミツバメが上空を舞う。ザトウクジラが回遊する横をアザラシを乗せた氷山が流れていく。
海と空の青さに挟まれて純白の氷河に覆われた山々が、何とも鮮やかだ。中でも海峡の出口から眺めたフランス山は、山頂からすそ野まで氷河と新雪に覆われ、神々しいほどの美しさであった。
「フランス山をこれだけ綺麗に眺められるのは珍しいことです」と南極11回目の野口氏が語っていた。天候に恵まれた我々は幸せ者だ。この景観は生涯忘れることはないだろう。(フランス山の景観は次回の冒頭に掲載します)