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「チョウゲンボウ」の巣立ちを追う 釜無川の高さ50メートルの絶壁の上段に、猛禽類のチョウゲンボウが産卵してからおよそ1ヶ月が経過した4月28日 。写真家の桑島氏と双眼鏡で巣の様子を観察していた午後3時15分、卵を暖め続ける雌の様子に変化が見え始めた。 雄が運んで来るエサを食べていた抱卵中の雌が、3時過ぎから腹が空いているはずなのに、まったくエサを受け取らなくなった。どうやらヒナが孵るのを感じて、一時でも卵から離れるのを避けているようなのだ。 それから15分ほどして、巣の中で雌親が動き始めた。何かをつついていた雌鳥が、白っぽいものを巣の外に捨て始めた。その様子を双眼鏡で眺めていた桑島氏が「卵のカラだ!」と叫んだ。ヒナが孵ったのだ! エサを運ぶ親鳥 連休明けの10日頃からヒナの成長の観察と写真撮影が始まった。NHKの記録映像を撮る黒岩さん親子も加わって総勢5名。 親鳥が警戒するので、ヒナがある程度成長するまでは100メートルほど離れた堤防の上から観察を続けることにした。これだけ離れていると、スチールカメラではほとんど撮影が出来ない。600ミリのレンズにコンバーチブルレンズを付け た900ミリ近い望遠レンズをつけても、ヒナの細かい仕草は撮れない。 その点テレビ用のビデオカメラは凄い。スチール換算で4500ミリ相当だそうだから、これだけ離れていても巣の中のヒナの様子が手に取るように分る。 覗かせて頂くと、まるで目の前にヒナたちいる感じだ。テレビで見る動物番組の感動的な様子はみなこうしたカメラによって撮られているのだという。 20日過ぎから川岸まで進んで本格的な撮影を始めた。ここだと50メートルほどの距離になるのでスチールカメラでも撮影可能だ。 孵ったヒナは5羽、チョウゲンボウにしては多い方だ。成長していく5羽のヒナに次々とエサを運ぶの親も大変だ。白い産毛(うぶげ)で覆われたヒナたちは親が近づくと、張り裂けんばかりに口を開けて 鳴く。餌をねだるヒナの姿はどの野鳥もみな同じだ。 運んでくるエサをよく見ると、スズメやホホジロなどの小鳥の他にトカゲやネズミ、モグラなどいろいろだ。少し大きめなエサを運んでくると、巣の中で親鳥がちぎって与えている。 その結果、巣の中は小鳥の羽が舞っている。一方、トカゲなどの小さな餌の場合はヒナの口にそのまま放り込んで飛び立っていく。 驚異的な猛禽類の超能力 25日を過ぎると一段と成長し、最初に孵化したヒナは産毛が抜け成鳥の姿に変わってきた。 親鳥は時々羽を休めるために、岩壁に張り出した木の枝に止まる。最初のうちは、ヒナを守るために巣の周りに止まることが多かったが、しだいに高い場所に移っていく。 彼らが高い場所を選ぶのにはわけがある。エサを探すのに高い場所ほど見通しがきくからだ。 こうした猛禽類は、なんと1キロ先の10センチの動物の動きをキャッチすることが出来るというから、彼らの驚異的な視覚には舌を巻く。しかし、そのすごさは目だけではない、実は 聴覚も凄いのだ。 同じ猛禽類のフクロウなどは、冬に雪の下に穴を作って移動するモグラやネズミのかすかな音を、高い木の上から聞きとると言うから、彼らの驚異的 な能力には驚かされる。いつものことながら、こうして動物の生態を見ていると、人間の5感の鈍感さがいやと言うほど感じられてくる。
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チョウゲンボウ
川原や草原で見かける小型のハヤブサ。地上の獲物を狙ってホバリングする姿を見かけることが多い。雄は頭と尾が灰色で背面が茶褐色。雌は上面が茶褐色で一面に黒色横班がある。 日本の他にアフリカとユーラシア大陸に繁殖地を持つ。我が国では本州の中部と北部が主な繁殖地。体長雌33センチ、雄38センチ。 |
チョウゲンボウが巣を |
撮影する著者 |
ヒナが孵っておよそ2週間、産毛の生えたヒナが大きな口を開けて親鳥を待つ
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さらに1週間すると、産毛が抜け変わってきた |
4週間目、成長の早い
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上空を旋回する親鳥の姿を追うヒナたち |
巣の近くの岩壁で |
同じチョウゲンボウが 巣から飛び立つのが
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エサを運ぶ親鳥を 5匹のヒナが写った
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巣立ち直前のヒナが、持ち込んだ餌のスズメに群がる |
捕ってきたエサを雌に |
岩壁の最上段の止まり木で羽を休めていた雌が、何かに驚いて羽を広げた瞬間 |