色づく赤い絨毯
長野県のほぼ中央、南アルプスと中央アルプスに抱かれた伊那谷の北部に位置する箕輪町(みのわちょう)。そこには日本では珍しい
「赤い絨毯」と呼ばれる赤いソバ畑がある。我が家から中央高速を名古屋方面に向けて30分ほど走って伊北インターで降り、一般道を中央アルプス方面に向かって10分ほど走ったところにある。
多くの読者はピンク色に輝いたソバ畑など見たことがないに違いない。赤い色の花をつけるソバは日本固有の品種ではないからである。それは遠くヒマラヤから持ち帰ったソバを改良して
、日本に適した種に品種改良したもので、 「高嶺ルビー」と名付けられてる極めて珍しい品種である。4.2ヘクタールの広い敷地一帯は標高が900メートル、まさに高嶺で育つルビー色のソバというわけである。
出かけたついでに、岐阜県の中津川市まで足を延ばすことにした。今度は「日本種ソバ」の広大なソバ畑を見学するためである。木曽川に沿って国道を走ることおよそ40分、木曽川の険しい崖の間にかかった「木曽の桟(かけはし)」が目にとまった。
江戸時代、丸太と板を組み、藤づるでゆわえて作った全長102メートルほどの架け橋がそもそもの始まりで、長い間「寝覚の床」と共に木曽路の旅情を慰めてくれる景勝地の一つであった。正岡子規が
、「かけはしや、あぶない処に山つつじ」、「桟(かけはし)や水にとどかず五月雨」と詠んだ地でもある。
さらに1時間ほど走って木曽川を渡ると、中津川市の坂下と呼ばれるエリアに着く。そこから山に向かって少し進むと、「椛の湖・自然公園」に到着。そこには、箕輪町の赤ソバ畑よりさらに広い「赤い絨毯」ならぬ「白い絨毯」が広がっている。
傑作だったのは、そば畑の脇に立ち並んだ37体の「かかし」の姿であった。観光協会の肝いりで、地元の人たちが作られたものと思われるが、様々な姿をしたかかしはその姿が傑作で、中でも男女の子供姿の2体のかかしはなんとも微笑ましかった。