懸念されているウクライナ情勢は益々厳しい状況と化して来ており、24日のロシア軍による侵攻開始以来、子供を含む350人以上の民間人が死亡する中、戦闘が激化してきている首都キエフなどの都市を中心に周辺国に逃れようとする市民が急増、既にその数は50万人を超える事態となっているようである。また直近の情報では気化爆弾が使用され、市民の中に新たに多くの死傷者が発生したようである。
第二次世界大戦後最大の難民危機、人道危機となるこうした事態を受けて、ヨーロッパ諸国を始め多くの国々では大きな衝撃が走っており、プーチン大統領の行っている非人道的な行為に対する非難の声が一段と高まって来ている。
こうした事態を受けて開かれた国連の緊急特別会合では1分間の黙とうの後、ロシア政府に対する厳しい避難の声が上がっているが、常任理事国のロシアが反対するため、常任理事会における避難決議の採択は出来ないままでいるようである。
ただ、ロシアに対してEU諸国だけでなく米国や日本などが厳しい経済制裁に踏み切っているため、ロシアへの輸出入がストップ状態となっており、また、ロシアの中央銀行に対する制裁発動によってロシアの通貨・ルーブルが急落していることから、ロシア政府は金利を20%まで引き上げて対処しようとしている。しかし、プーチンの強気政策が変わらない限り、ロシア経済がこれから先、一段と厳しい状況に陥ることは避けられないのではなかろうか。
こうした情勢下、ロシア国民の生活が次第に厳しさを増してきており、一部の国民からプーチンの政策に対する非難の声も上がって来ているようである。そうした動きを受けてフランスのマクロン大統領の仲介で、ロシアとウクライナとの会談が行われようとしているが、プーチンはウクライナの非軍事化やクリミア半島におけるロシアの主権承認を求めているようなので、会談の成果はあまり期待できそうもなさそうである。
私は、そう簡単に和解が成立することは難しく、もし休戦が実現したとしても、それは中途半端な休戦で火種は消えることなく、やがては「ロシア対EU」との対立へと向かうことになるのではないかと按じている。そして、その行く先は米国や中国、そして我が国等を巻き込んだ世界を2分する争いに発展する可能性もありそうである。
何より心配なのは、プーチン大統領が核の使用をちらつかせ始めていることである。多くの読者はまさかそこまで進むことはないだろうと考えておられることと思うが、前回記したように大統領が元ソ連の諜報機関・KGBの出身者であることや、EUや米国などのトップと違い、既に20年の長きにわたって政権の座を我が物として絶大な権力を保持して来ている点を考えると、あまり甘く考えない方が良さそうである。