竜~池を訪ねる
今週のはじめ、キクザキイチゲが咲いているという話を聞いて、家から30分ほどの八ヶ岳西南麓にある竜~池を訪ねた。この花は前回掲載した「咲き誇るフクジュソウ」で紹介したアズマイチゲの姉妹種である。花の色は白から、淡い青、濃い青まで色々で、白色の花はアズマイチゲによく似ていて見分けるのが難しい。
4月中旬といえども、南アルプスの甲斐駒ヶ岳山頂は残雪で覆われて白く輝いている。今年は積雪の日が多かった上に、山麓が雨でも、2000メートル
を超す山頂は雪になっているため、我が家から見える富士山も八ヶ岳もいつになく雪の量が多い。
竜~池の周りには名残惜しげなザゼンソウや可憐なオオイヌノフグリ、ヒメオドリコソウなどがひっそりと咲いていたが、お目当てのキクザキイチゲは昨夜の雨と早朝の気温の低さのため、下を向いて花を閉じたままであった。
開花を見るには、陽が昇って気温が上がるまで待つしかない。
3時間ほどして11時を少し回った頃、まるでキクザキイチゲの体内時計が時を知らせたかのように、一斉に開き始めた。薄紫色の花びらと純白の花弁のコントラストが艶やかで、近くに寄って眺めると見事なほどに美しい。
近くを通りかかった女性にお聞きすると、以前は池の畔の土手一面にもっとたくさん咲いていたようである。商売にしようとしたのか、自宅の庭に植えようとしたのか、根から掘り起こして持ち帰ってしまう輩がいたようで、
残念ながら今はほんの一部分にしか残されていない。
「自分さえ良ければ、金にさえなれば、今さえ良ければ」の情けない輩(やから)の愚行には困ったものである。写真集『神々の楽園
八ヶ岳』にも記したように、こうして八ヶ岳山麓の可憐な草花が年々姿を消していくのである。
草花が消え、野鳥が減り、動物がいなくなった地球に何が起きるのか? 時あたかも 地球は悲しみの星「サラス」から希望の星「アルス」
へと転換期を迎えている。どうやら人類は蓄積されたカルマの精算のために、厳しい「産みの苦しみ」を避けては通れそうもなさそうである。