年も押し迫った12月27日、中央アルプスの一角にある千畳敷カールを訪ねた。我が家から車で中央高速を名古屋に向かって約1時間、駒ヶ根インターで下りた後6分ほど走ると
、バス停に着く。ここから先は一般車両は入山禁止になっているため、専用バスに乗りかえ駒ヶ岳ロープウエイの始発駅「しらび平」に向かう。
始発駅の標高は1600m、昼ながら気温は氷点下。ここからロープウエイで標高差1000mを7分半で一気に駆け上が
る。この間、車窓に映る景観はなかなかの迫力である。到着した千畳敷カール駅はロープウエイの日本最高地点駅である。標高2612mの雲上の駅の外へ
一歩出ると、そこは中級の冬山の山頂と何ら変わらない環境。吹雪いていることもあって強烈な寒さが襲う。
しかし、宝剣岳、中岳、木曽駒ヶ岳など3000m級の山々が連なる中央アルプスが目の前に迫る景観は凄い迫力だ。下界は晴天だったが、連なる峰々
の山頂は流れる雲と吹雪で見え隠れしている。前回訪ねた際は紅葉の秋だったので、山麓に降りて千畳敷カール内を歩いたり宝剣山の中腹にまで登ったりしたが、今回はカール内は深い雪に覆われているため、
それは出来そうにない。
前方を見渡すと、三名の登山客が宝剣山を目指して進んでいくのが遠望できる。望遠レンズで覗くと、昨夜降り積もった新雪をかき分けて進む三人は大変難儀をしているようである。気温はマイナス10度近いようだが、風が吹くと体感温度はそれより遙かに低く肌が痛く感じる。
冬山登山は大変だ。
30分ほどしたであろうか、龍神様のご配慮でしばらくすると上空に青空が
広がり出した。最近はこうしたことがしばしば起きるので、素直にそう受け止めることにしている。山頂にかかっていた雲も流れ始め、吹雪も次第に収まって向かいの山々が紺碧の青空を背景にくっきりと浮かび上
がってきた。白銀に輝くその峰々の姿は実に美しく神々しい。真向かいの和合山の隣に連なるのが標高2925mの宝剣岳。剣の先のようにバランスの取れた
その容姿はまさに宝剣岳の名の通りである。
間近から見る峰々の美しさに見ほれていたが、あまりの寒さで一旦山頂にあるホテルの食堂に入り暖を取ることにした。熱い紅茶を飲
み一息ついたところで、ホテルの反対側に出てみると、そこには南アルプス連峰が午後の陽を浴びて
見事に輝く姿が一望できた。眼下に見えるとのは駒ヶ根市の町並みである。よく見ると、富士山が頂を少しばかり出しているのが見える。3000m級の峰が連なる南アルプスの先に浮かぶ富士を遠望できるの
は、2600mの高地に立って始めて可能となるのだ。
次回は厳寒の八ヶ岳をご紹介する予定である。