池を取り囲む見事な紅葉
北八ヶ岳の広大な原生林の中に、満面に清水をたたえた神秘的な湖「白駒の池」がある。標高2100M以上の湖としては日本最大の天然湖で、標高が 高いだけに八ケ岳周辺では一番早く紅葉を楽しめる場所の一つである。
中央高速道路の諏訪インターを降りて、国道299号線を麦草峠(2127M)に向かって進むと、峠を越えて直ぐ先に駐車場があり、そこから歩いて約15分程で「白駒の池」に着く。
文献『南佐久口碑伝説集』によると、池の名「白駒の池」は当地に伝わる民話に由来 しているようである。要約すると以下の通りである。
むかし、一組の男女が恋に落ちた。それをよく思わない女の父親は、二人の仲を裂こうと男を山奥へと追いやってしまった。女はこれを追って山に入るが、道に迷ってしまう。そこへ一頭の白馬が現れ、女を池まで導き、男がこの池の中にいると告げる。女は白馬とともに池へと消え、二度と帰ることはなかった。
この民話に登場する白馬が「白駒」で、池名の由来となったというわけだ。
そんな悲恋民話が残されている湖に向かって進むと、歩道の周囲は樹齢数百年の時を刻んだツガ、トウヒ、シラビソなどの原生林で囲まれ、地面はまるで緑のジュウタンを敷きつめたよう に苔が一面を覆っている。まるで映画「もののけ姫」に出てきそうな風景である。400種を超す苔(こけ)が生息していることから、この辺りの森は「苔の森」と呼ばれている。
薄暗い原生林を抜けて湖岸に到着すると突然眼の前が開け、湖岸沿いの黄色いダケカンバと赤色のナナカマドの見事なコントラストが目に飛び込んでくる。 それは思わず声を上げたくなるほど鮮やかな紅葉である。
平日なので、周りの観光客はほとんどが年配者。冥土の土産には最高の景観である。「白駒の池」はあまり知られた池ではないが、今年は地元のテレビで3回にわたって紅葉の風景を放映したためだろうか、大変な数の来訪者で賑わっており、三脚を抱えたカメラマンも大勢訪ねていた。
ちょうど見頃であったので、どなたもきっと素晴らしい写真を撮られたに違いない。
原生林の中は400 種を超す緑色の 苔で覆われている
苔むす倒木
この苔はなんという 種類だろうか? 近寄ってよく見ると 芽が伸びている
苔の上に落ちた 紅葉の葉が風情を 醸し出していた