日々、地獄絵の世界が続く中東各地。 イエメンでは首都サヌアで多数が参列している葬儀会場がサウジアラビア主導の連合軍によって空爆され、150人ほどが死亡、500人を超す負傷者が出ている。 イエメンはスンニ派のサウジアラビアとシーア派のイランとの代理戦争の場と化してしまったようである。
一方、イラクでは「一歩踏み出したシリア・イラク情勢」で記したように、IS(イスラム国)の最大拠点となっている北部のモスルの奪回作戦が始まっているが、ISの激しい抵抗で市民に多くの犠牲者が出ているようである。
国連は新たに数万人の避難民が発生しており、その数は戦闘終結までには25万人を超えることになるだろうと予想している。
イラク政府や、国連のUNHCR協会が用意した救助用テントに収容できる避難民の数は、せいぜい5万人弱。 となると20万人を越す人々は攻撃から逃れても
、行く先がないことになる。 男性は強制的にISの戦闘員に加えられたり、人質としてイラク軍側の攻撃の盾になったりしているだけに、
働き手を失った上に行き場もない家族も出てくることだろう。
また、内戦が続くシリアでは、前回お伝えしたように、18日からロシアとシリア軍によるアレッポへの攻撃が一時的に中止され、市民の避難と武装勢力への投降が呼びかけられたが、どうやら
それに応じた者は私が予測したように、ほとんどいなかったようである。 これを受け、既にシリア軍による攻撃が再開されて
、学校などが空爆される被害も発生しているようだ。
ユニセフは11日から27日までに5つの学校が攻撃を受け、北西部イドリブ県ハースでは 、授業中の学校が空爆され生徒22人と教師の6人が亡くなったことを
発表している。 ロシア機による空爆だとされているが、ロシア政府は
「でっち上げだ」と全面的に否定しており、現段階では確かなことは分かっていない。
一方でシリアの国営メディアは反政府軍による攻撃で、アサド政権のお膝元の首都ダマスカスの大学周辺にロケット砲が着弾したことや、
アレッポ西部の小中学校に迫撃砲弾が着弾し子供3人が死亡、14人が負傷し
たことを伝えている。 国連は道義的責任を説いているが、戦闘行為に道義的責任など通用しないのが現実だ。 それこそが戦争の恐ろしさの実体なのである。
こうした状況下、ロシア軍による空爆再開も遅かれ早かれ始まることになるだろうが、
一時的な空爆中止と一般市民に対する避難措置を行った後だけに、攻撃の度合いはこれまで以上に増すことになるかもしれない。 そうなると、米国も反政府軍を後方から支援するだけではなく、米軍機によるシリア政府軍に対する直接の攻撃が始まることになるかもしれない。
ホワイトハウスでは、先日、国務省、CIA、米国統合参謀本部の代表者らを交えた会合が行なわれ、シリア政権側の陣地へ空爆を行なう問題が話し合われていることを、ワシントンポスト紙が伝えている。 一方、ロシアも米軍機の攻撃を予測し、ロシアの唯一の空母「アドミラル・クズネツォフ」をドーバー海峡を通って地中海に向かわせており、既にシリア沖に到着しているものと思われる。
今はまだ、嵐の前の静けさである。 問題はロシア政府軍の本格的な空爆が再開されたあと、米軍機がシリア軍に直接攻撃を行うことになった時である。 そしてその時は刻々と迫ってきている
ようである。
どうやらシリア内戦はいよいよその正念場を迎えることになりそうである。
一方で、米国とロシアが共に核戦争の準備を着々と進めているという情報も流れ始めている。 信じ難いことであるが、空言とは言い切れない面もある。 それについては
、後日また改めて記すことにする。