先日「気になるトルコとEUとの関係」でトルコとドイツとの関係が悪化してきており、これから先、さらにそうした流れがトルコとEUとの関係にも広がる可能性が大きいことをお伝えしたばかりであるが、その懸念がまた一歩深まるところとなった。
24日に開かれたEU議会において、7月のトルコのクーデター未遂事件以来、強権的な姿勢を強めるトルコ政府とのEU加盟交渉の凍結を、加盟各国に求める決議が採択されたからだ。 EUはこれまで、トルコのEU加盟に前向きな姿勢で交渉を進めてきていた。 それは難民・移民問題でトルコの協力が必要であったからである。
どうやらEUは方向転換を始めたようである。 こうしたEU議会の動きに対して、早速トルコ政府は強い反発を始めた。 エルドアン大統領は25日、EUが更なる動きに出るようなら国境を開放すると警告し、難民や移民のヨーロッパへの流入を抑えるためのEUとの協定を破棄すると発言したのだ。
現在、トルコ国内には300万人の難民がおり、世界最大規模の受け入れ国になっている。 この事実はトルコ政府にとってEUに対する強力な「外交上の武器」となっている。 ギリシャとの国境を開放したなら、滞在中の難民は一気にヨーロッパに向かって移動を開始することになるからである。 こうした事態はいまEU各国が一番恐れていることである。
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トルコとEUの亀裂が深まれば、我々は再びヨーロッパへと向かう
悲惨な難民の姿を見ることになるかもしれない。 (フランスF2)
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今回のエルドアン大統領の発言は、その「外交的武器」の存在を改めてちらつかせ、国境封鎖に対するEUからの見返りの30億ユーロ(3450億円)失うことがあっても、トルコ政府はその武器を使う用意があることを明らかにしたわけである。
トルコとEU諸国との対立は単に移民・難民問題に留まらず、世界情勢を一段と深刻化させる可能性が大きい。 それは、トルコがNATO(北大西洋条約機構)の加盟国であるからである。 両者の関係悪化は「欧米対ロシア・中国」の対立を産み、世界大戦に向かって一歩を踏み出すきっかけとなることは前回記した通りである。
それだけでなく、現在、中東諸国を混乱に陥れているIS(イスラム国)の掃討作戦を難しくすることにもなりそうである。 トルコ軍がシリアのIS拠点への空爆に参加しているだけでなく、NATOの加盟国として、米国を中心とした有志連合のIS掃討作戦に、トルコ内の空軍基地を提供しているからである。
来月開かれるEU首脳会議で、どのような議論が展開されるのか、注目しておく必要がありそうだ。
中東に混乱をもたらすイスラエルの山火事
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大規模な山火事で民家も焼失 (カタール・アルジャジーラ)
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このところ、イスラエルは異常な干ばつに見舞われているが、そうした状況下、先日から各地で大規模な山火事が発生し今もなお消火活動が続いている。 山火事はエルサレム近郊の都市部にも広がり家屋が焼失するなどして6万人の住民が避難、また、煙を吸って100人ほどが病院に運ばれる事態となっている。
問題は、今回の一連の山火事が中東情勢に新たな危機をもたらすことになりそうな点である。 なにゆえかというと、イスラエル政府は山火事の多くが放火であるとして、その背後にイスラエルに対して敵対心を持つパレスチナ人が関与していると考えているからである。
カタール・アルジャジーラは、ネタニヤフ首相が「火事の原因はテロ行為で、関与した者には厳格な罰を与える」と述べたことを伝えている。 ユダヤ財閥やユダヤ系米国組織を動かしてトランプ氏を当選させ、イランとの核協定を破棄させようと目論んでいるネタニヤフ政府は、これから先、天からの警告を無視し、
武力をもってパレスチナ人を更に苦しめるようなら、自らが大きな天罰を受けることになるかもしれない。
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