2ヶ月後のトランプ大統領登場に揺れる世界情勢の中で、心配されていた問題が浮上し始めて来た。 一つはロシアのシリア内戦への本格的参戦、一つはクーデター未遂事件後、トルコとEU(ヨーロッパ連合)との不協和音の発生である。
10月30日付けのHP「嵐の前の静けさ」で、シリア軍とロシア軍による
本格的な空爆再開も遅かれ早かれ始まることになるだろうが、
空爆中止で一般市民に対する避難措置を行った後だけに、攻撃の度合いはこれまで以上に増すことになるかもしれない、と記しておいた。 実際には市民の避難はゼロに近かったようだが、シリア政府とロシア政府の大義名分は立ったことになっている。
15日から恐れていた通り、シリア・ロシア両政府軍の本格的攻撃が始まったようだ。 シリア軍の攻撃の対象はシリア北部の都市アレッポ。 アレッポはシリア第一の商業都市であったが2012年に内戦が始まって以来、政府が掌握する西部と反政府軍が掌握する東部に分断され、今やシリア最大の戦場となってしまった。 特に東部に住む25万人の住民は食料や医薬品などの供給が絶たれ、地獄と化した中での生活を余儀なくされている。
そのアレッポ東部に対するシリア軍のパラシュート爆弾投下で、再び市民の犠牲が拡大している。 一方、ロシア軍も10月に地中海に配備していた空母から戦闘機を飛ばし、本格的な空爆を開始。 これまではシリアの駐留基地からの発着であったが、ロシアが保持する唯一の空母をシリア沖合に配備し、そこからの発進と言うことは、プーチン大統領がアサド政権擁護に並々ならぬ決意を持って臨んでいることを示している。
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地中海に派遣された空母から発進するロシア軍機
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空母からの発進が、米国の次期大統領のトランプ氏との電話会談を終えた直後であったことを考えると、シリア内戦への参加を拒否しているトランプ氏はロシア機の攻撃に反対しないことを、プーチン大統領は確信した上で、本格的な戦闘に踏み切ったものと思われる。 米国が政権移行期の間に戦況を有利に進めておこうとしていることは明白だ。
ロシア軍の今回の空爆は表面的にはアレッポの都市は避け、IS(イスラム国)などのテロリストが跋扈するイドリブやホルスの都市への攻撃となっているようだが、いずれ戦闘における重要な都市アレッポ東部への攻撃に踏み切ることは間違いない。 問題は「嵐の前の静けさ」でも記したように、こうしたロシアの行為に米国が反発し、米軍機によるシリア軍への直接攻撃を行うことになった時である。
ダームダックと化したオバマ政権は今は何も出来ない状況であり、またシリア内戦への参入を良しとしない次期大統領のトランプ氏も当分の間、シリア軍やロシア軍の戦闘には見て見ぬ振りを続けることになりそうであるが、戦争好きの軍部や「闇の勢力」がいつまでもそれを良しとするかである。
アサド政権の復活は、隣国イスラエルが望むことではないだけに、ユダヤの総力を結集してアメリカ軍の参戦を図ることになるのではないかと思われる。 問題はその時である。 いずれにしろ、世界大戦へのきっかけとなるシリア内戦が、いよいよその正念場を迎えようとしていることは確かである。 それに追い打ちをかけるのがトルコとEUとの不協和音であるが、その点については次回に改めて記すことにする。
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泣きを見るのはいつも一般市民。 アレッポの子供たちにとって、日々の暮らしはまさに地獄だ。
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