20日、モスクワでロシアとイラン、トルコ
3ヶ国の外相と国防相による会議が行われた。 議題はシリアの内戦終結に向けての話し合いであった。 前日に、トルコ駐在のロシア大使がトルコの警察官によって殺害された直後だけに、そのタイミングに驚かされた。
世界はロシアとトルコとの関係悪化が進むのではないかと懸念し、伝えられた情報の中には、犯行の裏にはロシアとトルコとの亀裂を狙う米国・CIA(中央情報局)の働きかけの噂もあっただけに、欧米のマスコミは皆驚きを隠せなかったようだ。
ロシアとイランはアサド政権を支持する一方で、トルコは反政府勢力を支援して来ていたことは、読者もご承知の通りである。 それゆえ、ロシアとトルコはシリア政策を巡って長い間対立して来ていたわけである。 ところが、EUとトルコ、EUとロシアとの関係がぎくしゃくし始めた頃から、両国は急速に接近。 先日から突如始まったアレッポの休戦を実現し、市民の避難が無事終了しようとしているわけである。
どうやら、こうした両国の接近の流れは、今回のトルコ大使殺害事件でも妨げられることはなかったようである。 むしろこれを契機とばかり、プーチン大統領はトルコとの関係強化を図り、シリアに影響力を持つイランを誘い込んで、アサド政権に有利な形での内戦終結に向けて、一気に動き始めたようである。
アレッポの市民と反政府勢力部隊の避難は、22日でほぼ完了することになりそうなので、これで、内戦の最重要拠点であったアレッポは、完全に政府軍の指揮下におかれることとなり、内戦の形勢は明らかに政府軍有利となった。
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着の身着のままで故郷アレッポの街を後にする避難民。
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今回の3国の外相・国防相会議は、まさにそのタイミングを狙って行われたわけで、プーチンの絶妙な戦略が功を奏したというわけだ。 3ヶ国の外相・国防相会議の後、ロシアのラブロフ外相は「これから先3ヶ国が仲介役となって、アサド政権と反政府勢力との直接対話を目指すこととなった」と発表。 これでは、シリア内戦終結に関しては、米国もEUも余計な口出しをするなよと、言われたも同然である。
ドイツのZDFテレビは、和平交渉が遅くとも2月はじめまでにカザフスタンで始まることになりそうだ、と伝えている。 それにしても、米国の政権交代による政治の空白期間と、イギリスの離脱問題と難民・移民問題で、EU(欧州連合)の動きが止まったこの時期を狙った敏速なロシアの動きは、見事としか言いようがない。 さすがは怪僧プーチンである。
1月に大統領に就任するトランプ氏もシリア内戦からは手を引こうと考えており、ロシアとの接近を優先する考えのようなので、多少の紆余曲折はあるだろうが、6年間にわたって続いてきたシリア内戦は、ようやく終結に向かって動き出すことになりそうだ。
しかしながら、命からがら地獄と化したアレッポからやっとの思いで避難したものの、十分な避難施設が用意されているわけではないので、難民たちはこれから先も、夜になると氷点下の中、羽織るコートもない厳しい状況が続きそうである。 彼らが一刻も早く地獄の苦しみから救われることが出来るよう、今はただ、国際社会からの暖かい支援が寄せられることを願うのみだ。
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こうした子供たちの姿を目にすると、内戦終結が一日も早いことを願わずにはおられない。
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