イギリスのBBC放送は、中国大陸の貧困者数が5億人(人口比36%)に達しているという国連データを挙げ、中国大陸の貧富の差が拡大を続けており、特に農村部
が危機的状況に置かれていることについて、非常に憂慮すべき事態だと報じている。
その実体を示すかのように、近年、中国では農村部において極度の貧困により家族間の殺傷事件が頻発している。 香港の東方日報が
10月3日に報じたところによると、9月7日早朝、52歳の女性呉氏は、夫が外出したすきにハンマーで孫の頭部を数回にわたり殴りつけ死亡させ
ている。
一家の収入は1年あたり千数百元(2万4000円)の生活保護しかなく、年間1800元(約
2万8000円)の学費の支払いが困難なため、いっそ殺した方がましだとまで思い詰めた上での犯行だったようである。
甘粛省でも8月26日、28歳の女性が村役人の不正により行政からの生活補助を打ち切られたことを悲観して、子供4人を斧で殺害した後、自身も服毒自殺
。 さらに、女性の入り婿も葬儀を済ませた後に服毒自殺したため、四世代が同居していた8人家族のうち、6人が死亡し
、老人2人だけが残されるという悲劇が起きている。
農村部において、どうしてこうした悲惨な事態が発生しているのかというと、極度の貧困に陥っている人々が急増し、もはや農業では生計を立てていけないと
、将来に対する絶望感が拡大してきているからである。
そうなった原因は共産党政権が行った改革開放運動によって、中国の農業がずたずたにされ、農村構造が叩き潰されてしまったからである。 都市部では巨万の富を得る人間が出る一方、農村部では食べることすらままならぬ状態と化してしまったというわけだ。
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農村部の農民に未来いに対する希望はない。ただその日暮らしを続けるだけだ。
都市部における共産党員幹部の超富裕層との格差は増すばかりである。
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農業従事者が労働に見合った利益を得ていないことは、物価の面から一目瞭然である。 中国の多くの物の値段は1980年代に比べると100倍以上に上昇したが、主食である穀物価格はほんの数倍しか値上がりしていない。 例えば、80年代のトウモロコシの市場価格は
1キロ0・7元(11円)で、今の価格は約3倍の2元(32円)強。「もはや穀物の価値はゼロに等しい」状態となっている。
これではとても生活が成り立たないことは明らかだ。
それでも農家が畑を耕し続けるのは、他に選択肢がないからだという。 その結果、多くの若者は都市部に出稼ぎに出て、農作業にたずさわる人は年老いた老人だけ。 そうした状況を知るネットユーザーは、「現在、農業に従事している
50歳以上の農業人口がゼロになってしまったら、農業技術を身につけた中国人は皆無となる。 誰も畑を耕さず、後継者もいな
くなってしまう。 14億の中国人は、外国から食べさせてもらうしかなくなってしまう」と中国の将来に警鐘を鳴らしている。
現に、平野部の農村地帯はまだましな方で、山間地域はさらに深刻。 棚田を耕す農民はほとんどおらず、多くの畑がうち捨てられ、荒れるがままに放置されているようである。
そうした状況に追い打ちをかけているのが、最近の異常気象による相次ぐ干ばつや洪水である。 その結果、農業が維持されている地方でも、農業をあきらめ始めている農家が急増してきているのだ。
こうなったら、14億の中国人の食料はどうなるのか。 異常気象は世界的規模で発生しており、世界の穀倉地帯全体が厳しい状態に追いこまれ、食糧不足が世界的問題となろうとしている時だけに、
これから先、14億人の食料を海外から簡単に手にすることが困難となってくることは間違いない。 その結果、発生する社会問題は食料品価格の高騰による混乱である。
都会暮らしで高収入を得ている人々はなんとかなるだろうが、貧困に喘ぐ人々は飢え死にするしかない。 そこで起きるのは貧者の富裕者に対する叛乱である。 私が以前から
伝えているように、中国における動乱は、農民を中心とした貧者たちや都会暮らしの貧困層によって引き起こされ、
人民解放軍による大規模鎮圧で、更なる動乱へと進むことになるのは避けられそうになさそうだ。
その結果、軍部内にも暴動を阻止しようとする兵士と、農民に同調する兵士との間に争いが起き、北部や東部など5つに分かれた軍部間や同じ軍部内での争いが発生し、全土を巻き込んだ大動乱に発展する
ことになる。 今回の農民の厳しい生活実態と農業軽視の実情を見ると、どうやら、我々は遠からずしてそんな情景を目にすることにな
りそうである。
6千万の留守児童と都市部を点転々とする
4千万の児童の行く末
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現在の中国には、両親の出稼ぎにより親と交流のないまま
放置された子供の数は4000万人を越してきている。
彼らは精神的に支障を来しており、両親の殺傷事件などが発生している。
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現在の中国では、収入、教育、養老保険などの面で、都市と農村の間のギャップが極端に大きくなって来ている。 中国の統計局が公開したデータによると、都市と農村の住民の収入の格差は、3倍近くに達している。 国際労働機関が
2005年に公表したデータによると、都市と農村の収入格差は世界の国家の絶対多数で
1・6以下に納まっており、2・0を超える国家は中国を含めた3ヶ国しかないという。
この数値を見れば都市部と農村部の収入格差がいかに大きいかが分かる。 こうした農村部の貧困状況は、いま中国社会に新たな問題を引き起こしている。 両親が出稼ぎに出た後に残された6000万人の留守児童と、出稼ぎに行く親に連れられて都市部を転々とする4000万人の児童の行く末である。
心理学者の葦志忠氏が行った調査の結果、留守児童の8割は長期間にわたって親と離れて暮らすことで、様々な心理的な問題を抱えるようになっていることが明らかになっている。 彼らは性格が内向的で自閉的になり、偏屈のため人とうまく交流できなかったり、または、情緒が不安定で、すぐにいらいらして興奮し、強い反抗的な態度をとったり
する2つの傾向があると葦氏は分析している。
広州市で、6歳の時から留守児童として育てられた16才の児童よって引き起こされた、両親の殺傷事件はその典型的な事例である。 少年は法廷で、「彼らはただ金を稼ぐことしか考えていない、自分をひとり故郷に置きざりにし、面倒を見てくれなかった。
彼らは自分に関心を寄せないばかりか、自由をも制限しようとした、彼らを殺してはじめて自分の思いを実現できた」と叫んだという。
因みに、留守児童の親の中で、平均1週間に1回子供と連絡を取っているのが16.2%、1カ月に1回が10.8%、不定期が29.7%で、43.3%はほとんど連絡をとっていないという。
つまり、70%を越す親子が十分なふれあいに著しく欠けているわけで、そうした留守児童が精神的に支障を来すのは十分にあり得ることだ。
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この子もまた両親と離ればなれになって暮らしている子供の一人のようだ。
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