イギリスやフランスなど世界のメディアは昨夜からのニュースで一斉に、シリアのアレッポ東部における戦闘が休戦状態となり、多くの市民や反政府勢力の兵士がアレッポを離れ始めていることを伝えている。 ロシアやトルコなどの仲介を受けてアサド政府が休戦に応じたからである。
空爆やロケット砲による爆撃から逃れようとする市民は、これまで反政府軍の盾として利用され、町から離れることが出来ずにいた。 先月からの政府軍による総攻撃で反政府軍は次々と拠点を失い、もはや抵抗する力を失い白旗を掲げることとなった。 その結果、14日早朝から停戦が実現し、市民が街を離れ反政府軍の戦闘員も西部のイドリブなどに移動を始めたのだ。
これで、4年ほど前から始まったアレッポの戦闘は、アサド政府軍の勝利で終結するところとなったわけだが、これは即、アサド政権を支援してきたロシア、イラン、ヒズボラ、レバノンのシーア派はなどの連合組織の、欧米諸国やサウジアラビアを中心とした中東の同盟国に対する勝利でもあった。
それはまた、ずるがしこいプーチン大統領が、アメリカの大統領の交代期という政府や軍部が動きづらいチャンスを狙って行った本格的な参戦の勝利でもあった。 オバマ米国政府のプーチン政権に対する完全な敗北である。
世界情勢が刻々と悪化する中、トランプ政権に対する景気回復期待から、株価が史上最高値を更新し続ける狂気の米国を見ていると、大統領が誰に替わろうと、米国はもはや世界の覇権国家の地位を失い、衰退に向かうことは間違いなさそうである。
今回の勝利によってアサド政権は最終的な勝利に向けて大きく一歩を踏み出したことは確かだが、シリアの内戦がこれから先、まだ続くことには変わりはない。 戦いが下火になった地域もあるが、激しさを増している地域もあり、一気に内戦終結に向かうことは難しく、さらにIS(イスラム国)などの過激派との戦いの終結も当分望めそうもないからである。
アレッポとてまだ反政府軍の一部の戦闘員は残り、最後の抵抗を続けることになりそうだ。 なにより気になるのは、ここ数日の空爆や爆撃で完膚無きまでに破壊され、瓦礫の中に閉じ込められたままの数百人の市民たちの生死である。 その中には多くの女性や子供たちも含まれているようだ。
今はNGOなどによる一切の支援活動が行われない状況となっているようなので、息を引き取る人々が次々と出ているに違いない。 シリア最大の都市で金融や工業の中心都市であったアレッポの街は、今まさに地獄の街と化しているのだ。 我々はこれから先も、悲惨な状況を目にしながら、国際社会の無力さを感じる日々が続くことになりそうであるが、これが終末を迎えようとしている地球という惑星の現実である限り、目をそらしてはならないのだ。