前回「中国・農民族の悲惨な実体」において、今中国農村部では農業人口が激減して来ているため、14億の民の食料は海外からの輸入に頼らざるを得なくなってくることを記した。 読まれた読者の中には、あれだけ広大な農地が見捨てられ、農業にたずさわる農民たちが姿を消してしまうなどと言うことが本当にあるのだろうか? と疑問に思われた方も多かったに違いない。
しかし、農業人口の減少と農作物の激減は現実に起きており、これは国家プロジェクトの遂行による結果であることを知って頂けたら、得心してもらえるに違いない。 そのプロジェクトというのは、現在、習近平政権が進めている巨大国家プロジェクトなのである。
それでは、その巨大国家プロジェクトなるものがいかなるものか説明しよう。 それは、2020年までに農民や出稼ぎ農民(農民工)を
新しく造る都市に移住させて新たな消費者を作りだし、GDP(国民総生産)を倍増させるという、2年前に始められた「新型都市計画」
なのである。
現在、農村を離れ
て出稼ぎ農民(農民工)として働いている多くの人々は、大都市に住み工場や建設現場で低賃金で働いている。 彼らこそ中国の驚異的な経済成長を下支えてきた人々であったのだ。
実は今中国政府は、そうした農民工たちを成長が限界に達した大都市から新たに建設する中小都市に移住させ、また農村部に残った
1億の農民も呼び寄せ、経済の活性化を図ろうとしているのだ。
今のままでは、農民や農民工たちの収入はあまりに低いため、内需の拡大に役に立っていない。 そうした彼ら農民や農民工を中小都市に
移動させ、新たな職に就かせて一定の収入を与える。 その結果、彼らは新たな消費者として、低迷している内需を拡大させ
る一役を担うことになるというわけだ。
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「新型都市計画」は新しく造られる中小都市へ、大都市に
住む農民工と農村部の農民を移動させる計画である。
この計画が実施されれば中国から農業従事者が消えてしまうことになる。
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こうした流れを国家全体に広げることによって、低迷している経済成長の起爆材にしようというわけである。 今年行われた全人会で李克強首相は、「この新型都市計画を完成させることによって、中国は不死鳥のごとく蘇り、再び光り輝くことになるであろう」と計画の重要性と不退転の決意の程を発表している。
どうやら習近平政権はこの「新型都市計画」を経済発展の主要政策にしようとしているようで、現に、幾つかの大都市では既に、
農民工たちが20年来住み着いて来た商業地域を撤去し、彼らを新たな中小都市へ移住させようとする動きが始まっているのだ。
その代表的な都市が中国内陸部・河南省の工業都市、鄭州市(ていしゅうし)である。 そこは人口1000万人の大都市であるが、その内の300万人が農民工で、町の中心部に一大タウンを造っ
ていた。 今年の7月、突然その地区の取り壊しが行われることが通知され、農民工たちは居場所を失って町を追い出されることとなってしまった。
追い出された農民工たちは今さら村に帰って農業に従事するわけにはいかない。 共産党政権は1億人の農民を農地から都市部に移動させようと、農作物の値段を安くしているため、農業では食っていけないからである。
そうなると、農民工の出戻りが出来ない上に、残った農民も農地を離れることになる。 その先にあるのは
、農業人口の消滅であり自給自足社会の終焉である。 こうして14億人の人口を抱えた中国は、やがて食料
の多くを海外からの輸入に頼ることになるのである。
しかし、今世界は異常気象によって農作物の凶作が発生し
、飢餓に苦しむ人々が出始めている。 それだけに、自給自足が出来なくなったら、輸入する食品価格は急騰し、低所得者は飢え死にするしか手がなくなってくる。
そこで起きるのは前回記した通り、貧者の富裕者に対する叛乱である。 こうして中国においても、ホピの預言が伝える、「高い地位の猟師
」と「低い地位の猟師」の間の「狩り合い合戦」が始まることになるのだ。
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既に河南省の鄭州市(ていしゅうし)の農民工の住む町は、完全に取り壊されてしまった。
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鄭州市(ていしゅうし)から撤去させられた農民工は頭を抱えている。
彼らから発せられる言葉は皆一様、習近平体制に対する強い非難である。
「共産党は昔と変わってしまった。 貧乏人を見捨てて金持ちばかりを見ている」
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