我が家から車で20分ほどの所にある井戸尻遺跡。 その近くの沼には「古代ハス」が咲
いている。 今回掲載したハスは古代ハスの中でも最も有名な品種「大賀ハス」で、1951年に大賀一郎博士が、2000年以上前の泥炭層の中から発掘した種子から育成したもの。 まさに太古の昔に咲いていたハスで、花は白地にピンク色がかった一重咲き、爽やかな美しい花である。
仏教では、泥水の中で成長し、清浄な美しい花を咲かせるハスの姿が、仏の智慧や慈悲の象徴とされている。 また、よい行いをした者は
死んだ後にともに極楽浄土に転生し、同一のハス(蓮)の花の上に身を託し生まれ変わるという思想があることから、「一蓮托生」という言葉の語源となっている。 確かに
花開いたハスを見ていると、独特の美しさを感じる。
ところで、読者は同じ泥水の中に咲く花で、開花した姿がよく似ている「ハス」と「スイレン」の見分け方をご存じだろうか? ハスの花は茎が長く水面よりかなり高い位置で咲くが、スイレンは茎が短
いため水面に浮くように咲くものが多い。 ただし、スイレンの中にもある程度茎の長いものもあるので、その時には葉の形で見分ける。
ハスの葉は丸い円形を描いて一面きれいな緑色をしているが(写真F)、スイレンは葉の中央部が中心に向かって裂けており、
葉の一部が茶色がかった色をしている(写真D)。 また日本産の野生のスイレンは「ヒツジグサ」と別名で呼ばれている。 それは花がひつじの時刻(午後2時頃)に開くことから名付けられ
たようであるが、実際には午前中から咲いている。 昔と気候が変わったためだろうか。(写真E)
ところで、2ヘクタールの大きな池にたくさんのハスの花が咲くことで有名な、岐阜県海津町の「木曽三川公園アクアワールド水郷パークセンター」では、例年なら、今頃はピンク色の花の盛りであるが、今年は異変が起きており、花はもとより、池を覆う葉もまったく見られ
ない状況で町役場の担当者が困惑している。
実は、同様なことが滋賀県の琵琶湖や草津市でも起きており、先日「ハスの花に異変」とテレビや新聞で取り上げられていた。 琵琶湖のハスの花は私も何年か滋賀県に住んでいたので、その壮大なハスの花の景観は覚えているが、今年の様子を写真で見ると葉も花もまったく写っておらず、信じられないような状況になっている。
その様子はまるで知恵と慈悲の心が消えかかっている昨今の世の中を見せられているかのようで、悲しくなってくる。