「白駒の池」は散策するだけならおよそ30〜40分で一周できる。 しかし、コケを探しては撮影しながら歩くとなると、すぐに2時間や3時間が過ぎてしまう。 散策の途中で遭遇するのが「もののけの森」である。 写真を見てもらえれば分かるように、そこはなんとも神秘的な雰囲気で、まさに「もののけ」たちが暮らしているような不思議な空間である。
コケは撮影も大変だが、撮影してきた後、その名前を図鑑の中から見つけ出すのはさらに大変。 これまで、野鳥や草花、蝶や昆虫など写真集を出したり、HPで紹介する際に、名前の分からないものが数多くあり、その都度、鳥類図鑑や野草図鑑、昆虫図鑑と首っ引きで名前を特定してききたが、コケの名前の特定はそれらに比べて遙かに難しい。
野鳥や蝶に比べたら草花や昆虫はその種類が多いだけ大変だ。 しかし、コケの名前の特定となるとさらに大変である。 1800種の中から特定しなければならないからだ。 一見したところよく似ているように見えるものでも、葉の形や茎の
先端に着く萌芽 ( さく)などの色合いをチェックすると微妙に違っていて
、別の種なのか同じ種なのか判断がつけにくい物が多いからである。
素人の私が名前を特定しようとするには、 一つ一つのコケの姿を上から横からと角度を変えて何枚かを撮影して
、図鑑の写真と見比べて判断するしかないが、
小冊子「北八ヶ岳 コケ図鑑」には載っていても、「日本の野生図鑑」には名前が載っていないものもある。 コケに造詣が深い方にお聞きしたところ、一流の専門家でも
実際に現物を目にしないと、写真だけではその種を断定することは難しい場合が多いようだ。
ものによっては、根をつけたまま研究室に持ち帰り、細胞分析までしないと特定できないものもあるという。
今回は3回にわたっておよそ40種類ほどのコケ写真を掲載したが、
私自身でたぶん間違いないだろうと名を特定出来たのはわずか10種類ほど。 また名前が記載されていても、専門家の目から見たら間違っている種もあるかもしれない。 したがって、記載した名前はあくまで参考程度にして頂き、関心がおありの方はご自身の目でしっかり確かめて頂きたい。
今回のコケの撮影で肝に銘じたことは、コケの撮影にはこれ以上深く関わらないこと。 これ以上突っ込んだら、残りの人生はコケのための日々となってしまうことになりそうだからである(^_^) 。 わずかな種類しか撮影出来なかったが、それでも要した日数は丸4日、写真のチェックと名前の特定に費やした時間は50時間を遙かに超えていた。
1日がかりで撮影し、帰宅後、夜半過ぎまでチェックして寝ると、コケの姿が次々と浮かんでは消え、消えては浮かんで夢の中での名前のチェックが続く。
そんな日の連続で少々コケそうになった1ヶ月余であった。