前回お伝えしたようにコケには1500種以上の種類があると言われても、大方の人はピンと来ないかもしれない。 どれも皆、
遠くから眺めたら緑の絨毯にしか見えないコケに、そんなに多くの種類が本当にあるのだろうかと思ってしまう。 私も種類の多さは事前に頭に入れて現地入りしたものの、いざ撮影しようと実際に見てみると、何種類かの違いには気がついたが、あとは皆同じように見えてしまって
、「白駒の森」の中に500種を越す種類があるとはとても思えなかった。
そこで白駒の池にある宿泊所に立ち寄ってそんな話をしたところ、「跪(ひざまづ)いて、ルーペ(拡大鏡)や接眼レンズでよく見なければだめですよ」と言われた。
そこで、出来るだけ近づいて丹念に見てみると確かに葉の形も違うし、茎の長さも異なり、中には長く伸びた茎から胞子が出ているものもあることが分かった。
上段の写真がその典型的な例である。 その姿はまさにマクロの世界でしか味わえないもので、自然の中に育つ小さな生命体の生き生きとした力強
さが感じられた。
しかし、強い生命力を持ってはいても、環境を選ぶことは他の植物と同様。「白駒の森」に日本にある1500種のコケの3分の1の種が生育していると言うことは、「白駒の池」周辺一帯の環境がコケの生殖に適している
ことは間違いない。
火山の噴火で運ばれた大小様々な石や岩があり、ダケカンバやコメツガ、シラビソなどの針葉樹が茂り、その間から適度に陽が漏れ
、適度の湿度が倒木に湿り気を与えている ・・・・・・・ といった様々な環境が多くの種のコケを育んで
来ているに違いない。 自然破壊が進む中、八ヶ岳山麓に残されたこうした環境だけはしっかりと保護していきたいものである。
撮影したコケの名前を特定することの難しさについては、改めて次回に記すことにしよう。