読者は「ハナモモ」という言葉を聞いたことはおありだろうか。 ひな祭りのときに、ひな人形と一緒に飾る花である。
モモは古来より中国では災いを除き、福を招くとされてきた
美しい花を咲かせる果樹である。 日本への渡来は古く、弥生時代にまでさかのぼるといわれている。 山梨県はその桃の里、収穫量は日本一でおよそ54000トン。 全国の桃の収穫量の3分の1を占めている。
東京の新宿駅から小淵沢駅に向かう途中、甲府駅の手前辺りに来ると、列車方向左手にピンク色に彩られた桃の木畑が見えてくる。
春に徳乃蔵を訪ねられた読者は、何度かご覧になっておられることだろう。
桃園に植えられた桃の木は桃の実を育てるためのものであるが、同じ桃の木でも実を採取するためでなく、花を楽しむために品種改良された園芸種がある。 それが「ハナモモ」である。 サクラの花の咲く時期に前後して
開花の最盛期を迎え、あでやかなピンクや赤、白の花が春の庭園を彩る。
そんな綺麗なハナモモの姿をあちらこちらで目にしてきた私であるが、数日前、隣の町を走っていたら、ハナモモの大木が目に止まった。 車を停めて近くによってよく見ると、色は濃いピンク色
、木の大きさは桜の木と変わりがないほどの大木。 これまで目にしてきたハナモモとは大きさが桁違い。
それだけに艶やかさがひときわ際だって見える。
花の姿をよく見ると濃い紅色の八重咲きで、近寄って花弁の形をよく見ると、いつも目にするハナモモとは少し違った感じだ。
通りかかった近所の方に名前をお聞きしたところ、神社の境内に咲く貴重な木だとは教えてくれたが、名前は教えてもらえなかった。
早速家に帰って図鑑で調べて見たところ、ハナモモの一種で「キクモモ」という種のようであった。 その名前は花弁が細長く菊に似ていることに由来しており、ゲンジグルマ(源氏車)と呼ばれることもあるようだ。
パソコンでそのキクモモの写真を検索してみたが、小さな観賞用の木ばかりで、大きくてもせいぜい3メートル前後。 今回掲載したような高さ10メートルを越す大木のキクモモはまったく見ることが出来なかった。 これだけのキクモモの大木はそう簡単に目にすることは出来ない
のかもしれない。
ハナモモの開花期間は桜に比べると長い。 ゴールデンウイーク中なら、満開の姿を目にすることが出来ると思うので、徳乃蔵を訪ねられる際には、是非立ち寄ってご覧になられたらいかがだろうか。 場所は
徳乃蔵からおよそ15分ほどなので、訪ねることは容易だ。