梅雨明けの季節を迎える頃になると訪ねてみたいと思うのが、隣町・富士見町の井戸尻遺跡の近くにあるハスやスイレンの咲く池である。 そこは
「大賀ハス」で有名な古代ハスやコウホネという名の珍しいスイレンが咲いているからである。
また、井戸尻遺跡は我が国の縄文時代中期の文化を代表する「国の遺跡」に指定されており、その周辺から発掘された土器の中には、写真集『神々の楽園
八ヶ岳』でも紹介しているように、素晴らしい芸術作品がたくさんある。
訪ねてみると、花々の間をシオカラトンボや赤トンボが舞い、
小さくてかわいいアマガエルや大きなトノサマガエルなどが飛び跳ねている。 そんな姿を見ると、今年もはや盛夏の季節が近づいて来ているのを感じる。
ハスの古名「はちす」は、ハスの
中心部にある花托(花床・写真A、Bを参照)が「蜂の巣」のように見えることに由来すると言われており、その「はちす」がなまって変化したのが「蓮(はす)」である。 そんなハスの花言葉の中で、私が
最も好きなのが「清らかな心」である。
仏教では、泥水の中で成長し清浄な美しい花を咲かせるハスの姿が、仏の智慧や慈悲の象徴とされている。 また、よい行いをした者は死後に極楽浄土に往生し、ハスの花の上に身を託し生まれ変わるという思想があり、「一蓮托生」という言葉の語源ともなっている。
今回掲載した「大賀ハス」と呼ばれる古代ハスは、1951(昭和26)年、千葉市で2千年以上前の地層から見つかった種子を
、植物学者の大賀一郎氏が発芽させたことで、全国に広まったものである。 井戸尻遺跡や「大賀ハス」の咲く池を訪ねると、太古の人々の暮らしが思い出され、
なぜか八ヶ岳山麓一帯に栄えた太古の時代に懐かしさを感じる。
ハスもスイレンもちょうど今が見頃であるので、明日からの3連休に徳乃蔵を訪ねられる予定のある方は、徳乃蔵からわずか10分足らずの距離なので、井戸尻博物館と一緒に訪ね
てみてはいかがだろうか。 眼前に広がる青緑色に輝く甲斐駒ケ岳の爽やかな景観も、きっと疲れた心を癒して下さることだろう。