盆休みを利用して久しぶりに長野県の上高地を訪ねた。
鏡のように美しい水面に、3000m級の雄大な穂高連峰やダケカンバなどの針葉樹林が映る大正池の姿は、なんとも美しい。 特にこの日は、目の前に浮かぶ山並みと水面に朝もやがかかり、その神秘的な姿は見る者の心を癒してくれる。 こうした風景を見ていると、人間が自然の中の一部であることが改めて思い起こされる。
この大正池は今から100年ほど前の大正4年(1915年)に近くにある焼岳の大噴火によって、梓川(あずさがわ)が大量の泥流によってせき止められて出来た池である。 標高1490メートルの高地に出現した池は、深さがおよそ40メートル、周囲は39平方キロメートルと現在の2倍もあり、昭和の初期には池の中で立ち枯れとなった木々が2000数百本あったと伝えられている。
7月からの雨と曇り空が続く中、当日は幸いにも一部に青空が見え陽が射す天気であったが、何といっても素晴らしかったのは、川面から山の裾にかけてかかる朝もやに包まれた幻想的な風景であった。 都市部から来られた方にとっては最高の癒しの一時となられたに違いない。 昨今の心のすさむ世の中で、魂を癒すにはこうした緑に包まれた自然の中に身を置くことは何よりである。
ただこの日は早朝4時起きして訪ねたのだが、盆休みであったため、大変な観光客でレンズの向ける先のどこにも人影が写り、撮影には一苦労するところとなった。 今回掲載した写真の中で珍しい一枚のショットは、木に止まる鴨の姿。 水面に浮かぶ鴨はよく見かける風景だが、大木に止まった姿は初めて目にする光景であった。