アマゾンやそれに隣接するパンタナル湿原の火災については、「ブラジルで拡大する米国を上回る巨大森林火災」、「アマゾンの森林火災がもたらしたパンタナール湿地帯の火災」などで、既に2回お伝えしてきた。
その後も延焼の勢いは一向に衰えていないようで、ブラジルの国立宇宙研究所(INPE)が今月1日に発表したデータによると、10月もまたアマゾン熱帯雨林の火災件数が増加しており、年初からの火災は前年同期比で25%増加する事態となっているようである。
10月単月でみると、アマゾンの火災は1万7326件で前年同月の2倍以上に達しており、年初からの件数は過去10年で最多で、すでに昨年通年の数を上回っているようである。またそれに隣接する世界最大の湿原であるパンタナル湿原での火災も、10月は前年同月より増加。年初からの合計は1998年の統計開始以来最大となっている。
リオデジャネイロ連邦大学によると、年初から10月25日までに湿原の28%が焼失しており、これは、デンマークの面積(43,098平方キロメートル)に匹敵する規模というから、北海道の半分を上回る面積となってくる。
この焼失面積はパンタナル湿原だけの面積で、アマゾン本体の森林火災は私が南米を訪ねた当時から発生し続けていることを考えると、既に日本列島全域に匹敵する面積が焼失していることは間違いなく、その規模がいかに大きくなって来ているかが分かろうというものである。
前回も記したが、昨年就任したブラジルのボルソナロ大統領が力を入れているのは、畜産業を拡大して食肉を大量生産し貧困脱却を図る政策である、その結果、広大な牧場や家畜に与える餌を作るための畑が必要となるため、就任以降、森林火災だけでなく森林伐採も急加速しているのである。
環境活動家らは、ボルソナロ大統領の行っている政策は違法な伐採や採掘、農場建設を助長していると批判しており、国際社会からもブラジル政府が森林保護に充分な対策を講じていないと批判が起きている。実はそうしたブラジル政府の政策に手を貸している組織があるのである。
グリーンピースによる最新の調査によると、欧州の銀行や投資家、HSBC、ドイツ銀行、サンタンデール銀行やプルデンシャルなどが、食肉加工大手マルフリッグ、ミネルバ、そしてJBSなどに高額な投資を続け、それがボルドロナ大統領の政策を推し進めてアマゾンの森林破壊の原因となっているようである。これらの企業やボルソロナ大統領にとって、森林火災などがもたらす地球や人類に及ぼす悪しき影響など眼中にないようである。
コロナウイルス禍は治療薬やワクチンが開発されれば、遠からずして収まるであろうが、ブラジルなどアマゾン周辺国が経済発展を優先して、これから先もアマゾンやそれに隣接する湿地帯などの火災や破壊行為を放置しているようだと、気がついた時には、人類にとって取り返しのつかない事態となっていることは間違いない。
こうして地球は愚かな人間によって破壊され続けているわけであるが、地球自体も一つの生命体であることを考えると、この様な状況がいつまでも続くはずがない。今地球は風呂に入って汚れをきれいに洗い流し、再生する時が刻々と近づいているのである。
それなのに愚かな人間どもはいつになってもそれに気づかず、争い合っているのだから情けない。現に気候変動など眼中にないトランプ氏のような人物が、大統領として登場し米国を二分している姿を見れば、覇権国家米国の未来も限界に近づいたようである。