米国とロシア、イラン、シリアの対立深まる
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塩素系の化学兵器によるものと思われる攻撃で、手当てを受ける幼児 |
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8年目を迎えたシリアの内戦は政府軍と反体制派との戦いからエスカレートし、今や欧米諸国やイスラエル、それに対峙するロシア、イラン、トルコを巻き込んだ戦争へと向かい始めたようだ。 こうした状況を英国のBBCテレビは、世界の列強が参加した「小さな世界戦争」と表現している。
私はこれまで、シリアやイラク、イエメンで発生している戦闘や、イスラエル対パレスチナの紛争は、遠からずして「米国・EU対ロシア」間の大国間の戦争へと進み、やがてハルマゲドン(世界最終戦争)に向かう可能性があることをお伝えしてきた。
しかし、これまで世界のマスコミはそうした戦争や紛争に対して、あくまでイラク内戦、シリア内戦、イエメン内戦、イスラエル対パレスチナ問題という表現しか使かってこなかった。 ところがここに来て、「小さな」という言葉は添えているものの、「世界戦争」という言葉を使うようになったのだ。 これは聞き逃してはならない重要な点である。
おそらくこれから先、シリアを巡る「欧米対ロシア」間の対立が、激化傾向を見せる状況になった時には、一歩間違えると世界を巻き込んだ「世界戦争」へ進むことになるかもしれないと言った表現が、頻繁に使われることになる可能性は大きそうだ。 私にはそう思えてならないのである。
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今回の化学兵器使用を巡って、米国とプーチン、ハメネイ、アサド氏との対立は一段と激化しそうだ。
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「欧米対ロシアへ」の対立へと進む一つのきっかけとなりそうなのが、6日にシリア東グータ地区のドゥーマで発生した化学兵器によるものと思われる空爆である。 東グータ地区は90%が政府軍によって制圧され、唯一、反体制派軍が残っていたのがドゥーマである。 そこに投下された塩素ガス弾とされる爆弾によって96人が死亡、500人を超す負傷者が発生する事態となったのだ。
欧米諸国はシリア軍による化学兵器攻撃として、シリアだけでなくその裏についているロシアに向けても強い非難の声を上げている。 トランプ大統領はシリアのアサド大統領を「けだもの」と呼び、それを支えるプーチン大統領とロシアにも責任があると強く非難。 そして昨日の記者会見では、「彼らは大きな代償を支払うことになる」「24〜48時間後に重要な決断をすることになるだろう」と語っている。
ちょうど1年前、シリアで今回と同じように化学兵器が使われた際、トランプ大統領はその報復措置としてシリア軍の飛行場など複数の軍事基地へ50発以上の巡航ミサイルを発射している。 今回も同様な措置が執られるのではないかと懸念されているが、その規模はおそらく前回以上となり、ロシアとイランに対しても何らかの制裁措置が執られる可能性がありそうである。
もしもそうなった時には、ロシアとの対立激化だけでなく、イランとの対立も気になるところである。 イランへの制裁はトランプ大統領にとって大事なイスラエルを支援することに繋がるだけに、11月の中間選挙に向けて恰好の政策となることは間違いない。 また、5月に行われるイスラエルのエルサレム首都移転式典に参加する際に、大きな手土産にもなることだろう。
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昨年4月にアサド政権に対する報復措置として軍施設に発射されたミサイル
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こうした動きの中で私が気にしているのは、シリア問題や北朝鮮問題が重要な場面を迎えようとしているこの大事な時期に、トランプ大統領を支えてきた閣僚や補佐官が入れ替わっていることである。
ティラーソン国務長官と入れ替わった中央情報局(CIA)のポンペオ長官と、大統領補佐官に就任したジョン・ボルトン氏は共に強硬派で、イランや北朝鮮に対してもその傾向が強いことで知られている人物である。 大統領がこうした人物に迎合して過激な行動をとらなければよいのだが、気になるところである。
それにしてもイスラエルと言う国は、卑怯な国である。 国を奪い取られたパレスティナの人々が行う抗議行動に実弾を使って攻撃を行い、多くの死者を出すだけでなく、今回の化学兵器使用の騒動に便乗して軍用機がレバノン上空を通過し、シリア内戦に参加している敵国イランの軍事基地を空爆しているのだ。
とにかく今のネタニヤフ首相率いるイスラエルは、イランを叩きたくて仕方がないのだ。 その際の攻撃の対象が核施設関係であることは間違いない。 イスラエルにとって何より恐ろしいのは、イランが核を保有することであるからだ。 いずれにしろ、様々な形で世界は今、一歩一歩世界戦争に向かって進んでいることは、間違いなさそうである。
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