東シナ海で行われた両国の軍事演習
10年ぶりとなる南北首脳会談が明日に迫る中、北朝鮮と韓米の関係は融和ムードに包まれている。 トランプ大統領は24日に行われたフランスのマクロン大統領との会談で、キムジョンウン委員長を「非常に率直で、尊敬に値する」と評価、同席した記者たちを驚かせている。 数カ月前まで「ミニ・ロケットマン」と揶揄(やゆ)してきた人物の発言とは思えない、耳を疑うような発言である。
今世界のマスコミは、こうした北朝鮮問題に関する動きに集中し、明日の韓朝トップ会談の取材には3000人を超す記者が参加することになっているようである。 しかし、その陰に隠れてマスコミにはあまり大きく取り上げられずにいるが、「一つの中国」政策を進める中国と台湾の関係悪化は東アジアの新たな火種となろうとしている。 今回はその点について記すことにする。
ここ数年、潜水艦や航空母艦を保持するなど一気に軍事力を増して来ている中国。 こうした巨大化する軍事力を背景に、中国はいま東シナ海に人工島
を建設し領海域の拡大をはかっているが、同時に進めているのが台湾を自国領土とする「一つの中国」政策である。
台湾の歴史は複雑で、この1世紀の歴史を振り返ると、1895年の日清戦争によって我が国の領土となったあと、第二次世界大戦で敗戦した日本は領土権を放棄し、中華民国政府が自国領に編入。 しかし、その後の帰属権を複雑にしてきたのは、中国
本土で起きた政府軍と中国人民解放軍との間の内戦であった。
最終的に中国人民解放軍によって中華民国政府が滅ぼされ、中国共産党が「中華人民共和国」を宣言するところとなった。 その結果、蒋介石率いる中華民国政府は台湾に撤退し、1949年に中央政府機構を台湾に移転することになった。
つまり、中国本土と台湾は別の政府によって統治されることとなったのだ。
その後、1950年に朝鮮戦争が勃発したため、両者の軍事対決は停止され、その後も中国軍による攻撃は行われたものの、決定的な状況には至らず今日に
至っている。 そのため、国際法的には台湾の主権移転対象(帰属先)については不明確な状態にあり、いまだあいまいな状態が続いているというわけである。
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演習に出席した習近平主席は「今こそ強大な海軍を創り上げる時である」と訓示。
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軍事パレードに参加した空軍機と戦艦は中国軍の巨大化を印象付けていた。
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そうした状況下、習近平主席が就任して以来、巨大化する軍事力を背景に中国は、台湾を自国領土として統治権を奪う「一つの中国」政策を推し進めて来ている。 その作戦の一つとして行われているのが、東シナ海で行われている同国史上最大規模の海上における軍事パレードである。 また、先週には福建省に近い台湾海峡で実弾射撃演習も行われている。
軍事パレードには1万人以上の兵士と巨大空母や潜水艦など数10隻の艦艇や航空機が参加。 閲兵した習近平主席は「強大な海軍を創り上げる任務が今日ほど差し迫っている事はない」と発言。 台湾統合という「一つの中国」
政策を強大な軍事力を背景に成し遂げようとする姿勢を露わにしている。
問題はその台湾を中国と対峙するトランプ政権が強力に支援し始めたことである。 米国はこれまで禁じてきた米企業の台湾企業との商談行為を解禁し、潜水艦建造への技術協力も承認。
国内の雇用拡大のために、武器の輸出増を図るトランプ政権だけに心配だ。 また、観光旅行での台湾訪問を認める「台湾旅行法」が実施され、このところ多くの観光客だけでなく、
主要な政治家の訪問も頻繁に行われるようになって来ている。
こうした米国の後ろ盾を背景に、先般、台湾も艦船20隻と戦闘機8機による軍事訓練を公開。 参加した蔡英文総統は「わが軍は十分にコントロールされた状況で、しっかり準備をしている」と対抗心を露わにしている。
中国との軍事力の差は比較にならないが、後ろに米国が就くことになったら一大事、第二の北朝鮮問題となるからだ。
習近平主席が先の中国人民会議で絶大な権力基盤を手にしただけに、これから先、中国が「一つの中国」政策を成し遂げるために強大な軍事力を背景に
、いかなる手段を用いてくるか注視する必要がありそうだ。 これから先、もしも中国が台湾に軍事攻撃を仕掛けることになった時には、我が国の「尖閣諸島」も侵攻対象となる
可能性があり、上陸後に一気に自国領土を宣言することになるなるかもしれない。
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軍事演習に出席した蔡英文総統は「わが軍はしっかり準備が出来ている」と訓示。
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軍事演習に参加した台湾軍の艦船と航空機
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