最大の懸念材料とされてきた「イラン核合意」問題。 とうとう8日(日本時間の9日未明)、トランプ大統領から正式に核合意の離脱が発表された。「核合意は一方的なもので本来あるべきものではなく、平和をもたらすものではない」というのが離脱の理由で、米国はこれから先、イランに対して最大級の経済制裁を行うことにするというのだ。
「イラン核合意」はイランの核兵器開発を防ぐためのもので、12年もの歳月をかけて実現できたものである。 参加国はイランを含むドイツ、フランス、英国、米国、中国、ロシアなど7カ国
とEU(欧州連合)であるが、この合意は加盟国だけでなく、国際社会全体が共有するものであっただけに、今回のトランプ大統領の決定は、世界から厳しい非難を浴びることになるのは必至である。
これで、フランスのマクロン大統領、ドイツのメルケル首相、英国のジョンソン外相が立て続けに米国を訪問し、離脱を留めようとしてきたことは全て無に帰してしまった。 仏英独首脳は8日、今回の離脱発表を受けて早々に共同声明を出し、「遺憾の意と懸念を表す。われわれは合意の履行を続ける」と表明。 マクロン仏大統領はツイッターで「国際的な核不拡散の闘いが危機にさらされている」と憂慮を示した。
一方、イランのロウハニ大統領は8日、離脱発表を受けてテレビ演説し、「(米国を除く)5カ国と協議して核合意の目的が達成されるなら、イランはとどまる」と表明。 しかし一方で、必要ならば無制限にウラン濃縮活動を再開するなるかもしれないと警告。 問題は、イランがこれから先、米国の最大級の経済制裁に耐えられるかどうかである。
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米国の決定を強く非難するイランのロウハニ大統領
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最近の北朝鮮の核廃棄に向けて米朝の融和ムードが広がる中、もしも核廃棄が実現すれば「ノーベール平和賞」だと、支持者の集会でもてはやされ、トランプ大統領は満面笑みを浮かべて喜んでいた。 しかし、既にノーベル賞を受賞したオバマ大統領の最大の成果とされてきた「イラン核合意」を反故にしたからには、ノーベル賞の授与は100%無理だ。
問題は、世界各国から猛反発を受けながら、トランプ大統領が今回の合意離脱に踏み切った背景である。それは、かねてから申し上げてきたように、イスラエル寄り政策の実施であり、11月の議会選挙に向けて米国のユダヤ系組織や、米人口の25%が信者と言われている親イスラエルのキリスト教・福音派からの支持を得るためである。
これで、今月行われるイスラエルの建国70周年記念式典に、「米国大使館移転」に次ぐ「核合意破棄」をいう「大きな土産」を持って参加するトランプ大統領はさぞかし歓迎され、称えられることであろう。 しかし、パレスティナ側からの強い反発は必至で、当日、大規模な抗議運動が行わるようなので、大きなトラブルが発生し多数の死者が出ることになるかもしれない。
何はともあれ、これから先ヨーロッパ各国との交渉によって核合意が維持されることを願うのみであるが、一歩間違うと「イラン対イスラエル」だけでなく、中東各国の間に亀裂が生じ、地域の緊張が深まる事態になりかねないだけに、イラやイスラエルの動向については十分に注視しておく必要がありそうだ。
私個人としては、今回のトランプ大統領によるイラン核合意破棄は、これから先の米国の滅亡やハルマゲドン発生の大きなきっかけとなるのではないかと懸念している。 とり越し苦労であればよいのだが。
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イランの弾道ミサイル。
このミサイルがイスラエルに向けて飛ぶことのないよう願っている。
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