トランプ大統領に相手にされなかった
マクロン大統領とメルケル首相の訪米
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米国議会でトランプ大統領の政策に厳しい発言をするマクロン大統領 (ドイツZDFより) |
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世界の目が北朝鮮の核問題に向けられ続ける中、中国と台湾間の関係の悪化や、南シナ海や太平洋などでの中国軍の空母「遼寧」を交えた史上最大規模の訓練が実施されるなど、緊張感が増す動きが続いている。 その件に関しては「
中国が進める一つの中国政策の行くへ」に記した通りであるが、ここ1週間ほどの間に大国間の重要な首脳会談が次々と行われていた。
先ず最初は24日に行われた米仏首脳会談。 国賓として招かれたフランスのマクロン大統領は歓迎式典でトランプ大統領との緊密間を見せてはいたものの、訪米の目的であったトランプ大統領によるイラン核合意からの離脱をストップさせる試みは、見事に失敗に終わったようである。
冷や水を浴びせられたマクロン大統領は、翌日25日に招待された米議会での演説では、イランの核合意問題だけでなく、米国第一主義を掲げる保護主義や地球温暖化のパリ協定からの離脱、また同盟国に対する貿易戦争などトランプ大統領が掲げる政策を強く批判、共和党の議員からは拍手をもらえぬ異例なスピーチとなった
。
さらに二日後の27日にはドイツのメルケル首相が米国を訪問。 トランプ大統領との会談の主要な議題は、米独首脳会議と同様。 ここでもトランプ大統領とメルケル首相は握手や抱擁を繰り返し親密感をアッピールしたものの、議論は平行線をたどり
、イランの核合意からの離脱に関しては前向き発言は得られず
に終わってしまったようである。
鉄鋼とアルミニュームの輸入にかけられた関税は期限付きでEU諸国はまぬかれているものの、その期限とされていた5月1日、トランプ政権はEUに対する関税の判断は1ヶ月先延ばしすると発表。 マクロン大統領とメルケル首相は肩透かしを食ったようである。
訪米したメルケル首相も得るもののないまま帰国するところとなった。 |
ネタニヤフ首相のテレビ演説
5万5000ページの書類と183枚のCDの展示された前で、
「イランは嘘をついている」と国民に発表するネタニヤフ首相 |
問題はイランとの核に関する7カ国合意の行方である。 トランプ大統領が「イラン核合意は全く意味のない合意だ」と繰り返し、合意からの脱退をほのめかす中、イスラエルがそれに
拍車をかける態度に出た。
1日、イスラエルのネタニヤフ首相は国内の全てのテレビ局を使って「イランは核開発計画を密かに進めている」と大々的に発表。
イスラエルは情報機関によってその確かな証拠を握っているとして、5万5000ページの書類と183枚のCDをテレビの画面に映し出し「イランは嘘をついている」と声高々に語った。
ネタニヤフ首相の発表に対して、イラン政府は直ちに否定。 国際原子力機関(IAEA)もイスラエルが主張するような確かな証拠は何も見つかっていないと発表。 またEUのモゲリーニ外交安全保障上級代表も、平等な見地からイランの核開発計画の有無を調査できるのは国際原子力機関だけだとして、イスラエルの主張に対して懐疑的な考えを示し
た。
こうした動きの中で全く逆行しているのが米国である。 4月27日にイスラエルを訪問しネタニヤフ首相と対談した後、中東諸国を回り帰国についた米国のポンペイオ国務長官は機内で記者会見し、ネタニヤフ首相が発表した資料は本物で信頼すべきものだと発表。 こうした動きを見る限り、今やイスラエル政府とトランプ政権は完全に一体化して来ており、国務長官の即座の対応を見るとイラン核合意からの脱退は間違いなさそうである。
一方、イラン核合意を外交上の大きな成果だとしているEU・欧州連合にとって、米国の離脱はなんとしても避けたいところである。 だからこそ、EUを代表するフランスとドイツの両首脳が立て続けに米国を訪問し、トランプ大統領に核合意離脱を思いとどまるよう説得に努めたわけである。
イランとイスラエルとの攻防はシリアにおいて行われており、4月29日にはシリア中部の施設がミサイル攻撃を受けた際、シリアに派遣しているイランの革命防衛隊やシーア派民兵20人ほどが死亡するところとなったようである。 どうやら世界はまた一歩、混乱の世界へ向け歩み始めたようである。 今月12日には、米国がイラン核合意からの離脱についての見解を発表することになっているので、世界はトランプ大統領の発表を固唾をのんで見守ることになりそうである。
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