動き出したトランプ政権の波紋
 

 


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「壁建設」と「壁突破」

 
 

 
 


こんな壁が2000キロにわたって新たに建設されようとしている。
その費用はおよそ250億ドル(2兆8000億円)という説もある。

 
 

トランプ大統領就任から早4日、選挙公約が次々と実行に移され始めている。 TPP(環太平洋経済連携協定)からの完全離脱に続いて、25日には、象徴的な公約の一つであった、メキシコとの国境の壁の建設に対する文書に署名がなされ、「今日から、米国は国境を取り戻す。 麻薬の密売人などが好き勝手に振る舞うことは、今日で終わりだ」と高らかに宣言。 

良き悪しきは別にして、大統領就任直後のこれだけ早いタイミングの公約実行は極めて珍しいことである。 現在、メキシコとの間に横たわるおよそ 3200キロの国境に建設されている壁の長さは1000キロ。 したがって、公約通り完全に国境を封鎖するには、新たに2200キロの壁が必要になってくる。 その長さが東京〜大阪間の4倍であることを考えれば、建設費用が莫大な額になることは間違いない。

問題はそれだけの費用を公約通り、メキシコ政府に全額負担させることが出来るかである。 壁を建設することはトランプ政権の自由だが、それはメキシコ政府にとっては何の利益にもなることではない。 それゆえ、莫大な建設費用をメキシコが支払う理由はなく、 現にメキシコのペーニャ・ニエト大統領は一切支払うことは考えていない発言している。 これから先、仮に交渉が行われたとしても難航することは間違いない。

問題は、建設費用の負担だけに留まらない。 壁の建設は明らかに入国拒否の象徴となるだけに、メキシコ国民に与える感情面の負の影響は大きく、両国の友好が損なわれるのは間違いない。 既にトヨタ自動車社のメキシコの新工場の建設に対する圧力で、世界中の製造業者がメキシコへの新たな投資に慎重になっているだけに、メキシコ国民の反トランプ、反米国の感情は一段と高まることになりそうである。

 
 

 
 


メキシコでは反トランプ、反米国の動きが急激に進もうとしている。
こうした動きは米国にとって決してプラスになるものではない。

 

 

ダウ2万ドルの壁を突破

 
 

 
 


ウオール街では「狂気の相場」がまた始まったようだ。 
彼の帽子の「DOW  20,000 」が今日の相場を示している。

 
 

「メキシコとの壁」の建設に注目が集まっている一方で、いまウオール街では2万ドルと言う「ダウ平均の壁」が破られる事態となっている。 このところ、上がり下がりを繰り返していたダウ平均が、25日、とうとう2万ドルの大台を突破し史上最高値を更新したのだ。

市場はトランプ政権の掲げる減税と規制緩和、インフラ投資への意欲が米国経済を勢いづかせることになるだろうと、一か八かのカケに出たようである。 わずか42日間で1万9000ドルから1000ドル上昇した今回の値動きは、史上2番目となる速さであった。

これは、ウオール街に群がっているカネに目がくらんだ「物質至上主義」の投資家たちが、今どれほどアメリカ経済に対する見通しについて、楽観的な状態となっているかを示す何よりの証である。 今の世界の経済状況は米国を含めて暗雲が漂い続けている。 そんな中、欧米や我が国の株価は上昇し続けており、欧州各国や米国では史上最高値を次々と超えているのだから、何ともおかしなことだ。

私は以前、ダウ平均は1万8000ドルが限界ではないかと書いた。 しかし、それはものの見事に外れ、さらにそれから10%も上昇している。 まさに「恐れ入谷の鬼子母神」である。 だが、私の予測外れは見通しの甘さというより、ウオール街の輩たちがいかに狂気に走っているかを物語っているだけのことである。

そもそも、1万8000ドルを突破し、さらなる高値を目指していた選挙期間終盤にかけて、トランプ氏有利の情報が流れた直後から、株価は急落し1000ドル近い下げとなった。 それなのに、いざトランプ政権が誕生すると、彼の掲げた実効性に?がつく政策に惹かれて急上昇、あれよあれよという間に上昇し続け、今回の2万ドル突破と相成った次第である。 

こうした動きを見れば、最近の株式市場が経済の実体とはかけ離れ、単なる金儲けのための賭博場と化していることが分かろうというものである。 私のように経済界に長く身を置き、金融取引に深く関わって来た人間から見ると、まさに「狂気の相場」以外の何物でもない。 しばらくの間、遠くからカネに目がくらんだ輩たちの演じる「きちがい相場」の行方を見ていくことにしよう。

 

イスラエル入植活動を推進

 

 

 
 


ネタニヤフ首相が人の道に反したことをしていることを、彼の顔が示している。

 
 

トランプ政権誕生の悪影響はパレスチナ人を苦境に落とし込むことになりそうだ。 先日、国連の安全保障理事会で入植活動に対する非難決議が採択され、国際社会からも厳しい目が向けられているのにもかかわらず、驚くことに、イスラエル政府はそれに真っ向から反対する政策を実行に移し始めたのである。

イスラエル政府は24日、新たにヨルダン川西岸の占領地に、ユダヤ人入植者向けの住宅2500戸を建設する計画を承認したのだ。 22日に、エルサレム市が東エルサレムに住宅560戸を建設する計画を承認した直後だけに驚きだ。

まさにこうした動きは、イスラエル寄りのトランプ大統領の強力な後押しを前提にしたものであることは間違いない。 それは、オバマ政権の末期には、批判されるのを恐れて入植の動きが、全てストップしていたことを見れば明らかである。

ネタニヤフ首相は2月上旬にホワイトハウスで、トランプ大統領と会談することで合意しているだけに、この会談以降、今回のようなイスラエル政府の手前勝手な動きがますます加速する可能性は大である。 となるとこれから先、中東和平は完全に頓挫し、イスラエル対中東諸国間の対立が一段と激しくなって来そうである。 どうやら、恐れていた事態がまた一歩近づいて来たようだ。

 
 

 
 


占領されたパレスチナの領土は、イスラエルによって次々と入植されている。
 

 

 




 

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