いま米国だけでなく世界中が、中東など7ヶ国からの入国禁止の大統領令を巡って揺れている。 物議を醸す大統領令は次々と発令されてはいるものの、議会での閣僚の人事の承認が一向に進まず、大統領就任後2週間たった先週末で15人の閣僚の内決定したのはまだ4人。 オバマ大統領時の11人、ブッシュ大統領時の14人に比べるといかに少ないかが分かろうというものである。
政権交代時、米国では閣僚だけでなく、事務レベルの高官も総入れ替えとなる。 しかし、この事務レベルでもほとんど人選が進んでいないようなので、大統領令は発令されても実務的な動きが進まない状況が
、これから先まだ当分続きそうである。 その要因は、与党である共和党内にも反トランプ的な動きがあり、結束に乱れが生じているため
である。
そうした状況下、私が最も恐れていたトランプ政権誕生による中東情勢の悪化が進み始めている。 「イスラエルとイランとの対立」である。 ネタニヤフ首相が
トランプ政権の誕生を機に、エルサレムの首都を世界に認めさせ、さらには占領地への入植活動を一段と推し進めようとしていることは、既に「動き出したトランプ政権の波紋」で記した通りである。
一方、イランは中東・アフリカ7ヶ国からの米国への入国を一時的に禁止する大統領令に強く反発し、その抗議活動の一環として中距離ミサイルの発射実験を行った。 これに対してトランプ政権はイランの12の企業と13人の個人の米国内の資産凍結を発表
し、これから先、米国に対する反発行為が続けられるなら、イランに対して破壊的行為に出ると警告。 つまり、軍事的制裁を加えるぞという脅しを行ったというわけである。
ネタニヤフとトランプの一体化は中東に危機をもたらすことになりそうである。
|
これに対してイラン外務省は3日の声明で、開発しているミサイルは、国連決議で禁じられた核弾頭搭載可能なミサイルではないと強調
。 また革命防衛隊は米国の制裁発動に対して対抗措置を取ると警告し軍事演習を開始した。
「警告」対「警告」の応酬合戦となり、両国関係は悪化する一方である。
これでオバマ政権によってようやく実現した核合意により、イランとの国交断絶に終止符が打たれるかと思われたのもつかの間、再び緊張関係に逆戻りすることになりそうな気配である。 それを
なにより喜んでいるのがイスラエルであり、ネタニヤフである。 締結された核合意を反故にしたくてむずむずしているネタニヤフは、ここをチャンスとしてイランの核施設への破壊行為に出る可能性が高まって来ている。
問題は米国の在イスラエル大使館を、国際社会が首都と認めていないエルサレムに移す大統領令がいつ発効されるかである。 核合意に最も強く反対している
人物のCIA長官の任命や、イスラエルの右派もびっくりするような過激な発言をしている人物のイスラエル大使任命
などを考えると、エルサレムへの大使館移転はそう遠い先のことではないように思われる。
その時には、アラブ諸国の反発は避けられないため、中東に
新たな波乱が発生することは必至、 先ずは今月15日に訪米するネタニヤフとトランプ両首脳会談で、いかなる声明が出されるかに注目である。
|