人類滅亡までの時間を象徴する「終末時計」の針が、滅亡の日とする深夜0時にまた一歩近づいた。 アメリカが水爆実験を行った翌年の1953年以来、最も滅亡に近い2分30秒前となったのだ。
「世界終末時計」については、読者は何度か耳にし目にしたことがあることだろう。 これは、核戦争などによる人類の絶滅(終末)を午前0時になぞらえ、その終末までの残り時間を「零時まであと何分」という形で象徴的に示す時計のことである。
日本への原子爆弾投下から2年後、冷戦時代初期の1947年にアメリカの科学誌 Bulletin of the Atomic
Scientists
(「原子力科学者会報」)の表紙絵として誕生したものである。 以後、同誌は定期的に委員会を設けてその「時刻」の修正を行っており、人類滅亡の危険性が高まれば分針は進められ、逆に危険性が下がれば分針が戻されて来ている。
1989年10月号からは、核兵器からの脅威のみならず、気候変動による環境破壊や生命科学の負の側面による脅威なども考慮して針の動きが決定されているようである。 これまでもっとも分針が進んだのは米ソが相次いで水爆実験に成功した1953年の
「2分前」、もっとも戻ったのはソ連崩壊により冷戦が終結した1991年の「17分前」である。
残り時間は2分半となり、人類絶滅の危険度は最高度に達しようとしているわけだが、委員会がその主な要因として挙げているのは以下の
3点である。
@ トランプ大統領の核兵器使用の可能性を排除しないという発言。
A シリア情勢を巡る米国とロシアの対立の悪化。
B 北朝鮮の核実験の実施。
なんと言っても一番の影響を与えたのは、トランプ大統領の登場である。 選挙期間中から彼は核兵器使用の可能性を排除しないと発言して来ていたが、
29日には、核兵器の近代化やミサイル防衛システムの強化、さらには米艦船350隻と戦闘機100機の増強などを盛り込んだ「米軍再建」の大統領令に署名している。
プーチン大統領との親交を進め、対ロシアの経済制裁を解除する事で米露の融和を図ろうとしているように思われているが、IS(イスラム国)壊滅作戦などを巡って一歩関係が悪化した際には、トランプ氏の短絡的な性格とプーチン氏の悪知恵が火花を散らし、融和が一気に嫌悪と化す可能性は決して小さくなさそうである。
いずれにしろ委員会の主要メンバーが「終末時計の進行に1人の人間がこれほど大きく影響を与えたことはかつてないことだ」と語っていることを考えると、トランプ氏の言動が誰の目から見ても、攻撃的であり破壊的と見られていることは確かなようだ。
世論の2分化と憎しみ合いの感情の発生
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トランプ大統領の登場で、世界各地で憎しみ合いの感情が噴出し始めている。
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それと、世界終末時計の委員会では要因となっているかどうか分からないが、以下の3点は、世界中の国家間の紛争に「火に油を注ぐ」ことになることは間違いなさそうである。
@ トランプ大統領の過激な言動がもたらす憎悪感の発生。
A 最近の気候変動がもたらす国家間の紛争の発生。
B 世界的な火山活動の活発化。
EUのイギリスからの離脱に端を発した国民世論の二分化。 それに火をつけたのがトランプ大統領による時と場所をわきまえない過激な発言である。 イスラム系の人々やシリア難民の受け入れ停止の大統領令は、早くも米国国内だけでなく世界中に嵐を巻き起こしており、賛成派と反対派との間に生じている憎しみの感情は日に日に大きくなっている。
トランプ大統領の一連の発言や行動に対して、ノーベル平和賞受賞者のマララさん(19才)も「胸が張り裂ける
思いだ」と強く反対声明を発表。 首脳会談を終えて帰国したばかりのメイ英首相やドイツのメルケル首相
、フランスのオランド大統領も厳しく反発している。 トランプ氏を「正しい、素晴らしい人物だ」と絶賛しているのは、世界でただ一人、イスラエルのネタニヤフ首相だけだ。
トランプ氏の発言や行動は人々の間に嫌悪感を産む「負のエネルギー」を撒き散らしているだけに、イギリスのEU離脱後、二分化されて来ている人々の考えに火を注ぐところとなり、今や世界中が「憎み合い」と「非難合戦」に飲み込まれてしまったかのようである。 報道されるニュースを読むたびにその感が日に日に強くなってくる。
気候変動の影響度は?
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霧氷に覆われたヤシの木の景観は、世界の気候が完全に狂ってしまった何よりの証である。
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終末時計の30秒アップの主要の要因の中に、最近の気候変動と天変地異による環境破壊が加わっているのではないかと思うが、委員会のコメントの中では触れていない。
しかし、冬の北半球、特にヨーロッパ大陸における寒冷化と記録的な降雪、また夏の南半球、南米やオーストラリアにおける猛暑、干ばつ、山火事、 さらにはアタカマ砂漠からサハラ砂漠に至る世界各地の砂漠地帯で発生している降雪や、豪雨、草花の生長などの異常気象は、人々の生活に計り知れない悪影響を及ぼす一面を持っているだけに、時計の針を進める大きな要因と考えるべきではないだろうか。
気候変動は一気に人類の絶滅を引き起こすまでにはいかないかもしれないが、人々の生活環境を厳しくし、国家間の紛争を巻き起こす要因となるだけに気になるところである。 現に、今回のヨーロッパ大陸を襲った
寒波や大雪は、スペインやギリシャなど地中海周辺の野菜栽培の中心国に大きな打撃を与えており、ヨーロッパ各国の野菜の値段がものによっては何倍にも達しているようである。 まさに、昨年の夏の異常気象が全国的に野菜の高騰をもたらした
、我が国と同様な現象が起きているのである。
人々の生活を厳しくするこうした現象は、やがて人々の間に争い事を巻き起こすことになる。 それに世界中に撒き散らされた憎しみや争いの感情が加わったら、その先に待ち受けているのは、国家間の紛争であり、それが核戦争に繋がらないという保証はどこにもないのだ。
世界的な火山活動・地震の活発化の影響度は?
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1月17日の環太平洋火山帯にあるメキシコのコリマ火山の爆発的噴火
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先日、「イタリアでまたまた地震」に記したように、近年、世界的に地震が多発してきており、 この1ヶ月間だけでも、イタリアからオーストラリア北東のオセアニア諸島に至るまで、パプアニューギニア島のM7・9の巨大地震を含めて、M5以上の地震が7回発生している。
(下図参照)
そして、その地震も熊本地震やイタリア地震のように、余震と本震の区別がつけ難い地震や、余震らしき揺れが数千回か数万回に達する
、前例のない異常な地震が発生して来ている。 イタリアの地震回数は既に5万回に達しようとしているようである。
一方、火山活動も年々活発化して来ており、昨年は南極圏でも地震と共に幾つかの火山が噴火を始めており、南極半島の北の南極海に浮かぶサウスサンドウィッチ諸島では4月、5月、10月、12月と連続的に噴火し、10月には3つの火山、12月には2つの火山が同時噴火している。
南極の噴火も熊本やイタリアと同様、地震と同時進行しているようである。 また、多発する地震とカルデラ火山の不気味な関係については「イタリアの哲学者が残した週末預言」にも記しておいたが、なによりも不安なのは、噴火の兆候が見え始めて来ている巨大なカルデラ型火山の周辺で、異常な余震が続く不気味な地震が発生し始めて来ていることである。
九州の霧島火山帯にある霧島山や韓国岳(からくにだけ)を内包した東西約15キロ、南北5キロの巨大な「加久藤カルデラ」が本格的に噴火した時には、恐らく日本だけでなく、中国や韓国の一部は人が住めない状況になり、世界的にも寒冷化や大規模な凶作が発生することになると言われている。
ここ数年発生している霧島火山帯に属する阿蘇や桜島、霧島などの噴火活動は小規模であるが、カルデラ火山噴火につながる前兆である可能性はゼロではない。
「加久藤カルデラ」よりさらに巨大なイタリアの24個の火口を持つ「カンピ・フレグレイ」カルデラや、それよりもさらに数倍の規模の米国のイエローストーンの噴火が、同時多発的に起きたら、人類絶滅は先ず間違いなさそうだ。 私がかねてより伝えているように、富士山の噴火が世界の噴火の狼煙(のろし)となるようなら、富士の噴火は人類絶滅の発火点
である、終末時計の午前0時の「0分00秒前」となるのかもしれない。
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この1ヶ月間で発生した世界で発生したM5以上の重大地震
(クリックで拡大)
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