トルコのエルドアン大統領の「ドイツはナチスと同じだ」という発言によってドイツとトルコとの関係が一気に悪化するところとなった。 事の発端はトルコの閣僚がドイツを訪問し、ドイツに在住のトルコ人の集会に参加し、エルドアン大統領への指示を訴えようとしたところ、ドイツ政府から集会の開催を認められなかったことであった。
現在トルコでは、大統領の権限強化と任期の延長に関する憲法改正の是非を問う、国民投票が行われようとしているが、この国民投票には海外に在住の人々の参加が認められている。 そのため、多くの在住者がいる国での投票結果は成り行きに影響を与えるため、海外における集会には力を注ぐところとなっているのだ。
今回ドイツを訪問したのは経済相で、その集会がドイツ政府によって認められなかったことを受けて、5日トルコの首都で開かれた女性を対象とした集会で、エルドアン大統領は次のような驚くべき発言をしている。
「ドイツよ! それは民主主義とはまったく別のもので、お前たちのやり方はナチスが昔やったこととまったく同じだ」
この発言は一国のトップが発した言葉としては容易ならざるもので、世界を驚かす発言であった。昨年、トルコで発生したクーデター未遂事件以来、エルドアン大統領による強権政治に反発するEU(欧州連合)と
トルコとの関係が悪化する中、今回の発言でEUの中心国・ドイツとの関係は一気に最悪な状態になりそうである。
今のところ、ドイツ政府からは公式な反応は出ていないが、野党トップからは「恐ろしく脱線した発言だ!」「恥知らずの傲慢な発言だ!」と強い非難の声が上がっている。 心配なのは、ドイツとトルコとの関係悪化は、今後のEUとトルコとの関係に悪影響を及ぼす点である。
特に今は冬場で鳴りを潜めているが、シリアやアフガンなどからの難民の流入問題は消えたわけではない。 難民流入を抑える最大の決め手となっているのは、経由国・トルコからの流入禁止措置である。 トルコもEUからの支援金があるため、今のところ、流入禁止協定の破棄についての発言は行われていないが、EU諸国がドイツと同様、エルドアン大統領の強権政治に対する非難を強めていくようなら、いずれ難民協定の破棄が問題となることは間違いない。
シリアにおける内戦終結とIS(イスラム国)撲滅について、いまやトルコとロシアとの関係は一段と強化されつつある。 それだけに、トルコがEUとの関係を断ってロシア政府と強く結びつくようなことになるなら、EUは大変だ。 一歩間違うとEUの分裂にも発展しかねないだけに、目が離せなくなって来そうだ。