先日、テレビでエジプトのピラミッドの珍しい映像が映されていた。
それはピラミッドに来られる観光客を新型コロナウイルスから守るために、ピラミッドやフィンクス周辺を消毒している映像であった。何が珍しいかというと、その映像には観光客の姿が全く写っていなかったからである。どうやらギザ台地一帯を訪ねる観光客も激減して
いるようである。
そんな映像を見て思い出したのは、今から18年前、3度目のギザ台地訪問でピラミッドの前に立った時のことであった。この時もピラミッドとスフィンクスの前には観光客の姿が見当たらなかった。世界中から謎のピラミッドを一目見ようと出かけてくる有名なこの地に、日中、人の姿が見えないなどということは有り得ないことである。
それでは何故そんな珍しい情景に遭遇したのかというと、エジプトでテロが起きた直後だったからである。テレビでテロのニュースを見た私は最高のチャンスだと思い、翌日には空港に向かっていた。エジプトのピラミッドだけでなく、ペルーのマチュピチュにしろメキシコのチチェンイッツアにしろ
、有名な古代遺跡で観光客のいない時に、その場に立つなどというチャンスは滅多に無いことであったからである。
それゆえ、エジプトでテロが発生したニュースを見た時、こんな貴重なチャンスを逃したらまずいぞと思い、旅立つことに決めたというわけである。
搭乗した飛行機はガラガラでエコノミーのチケットでありながら席も食事もファーストクラス待遇。到着したカイロの空港からギザ台地までは2台のパトロールカーに護衛されて総理大臣並みの警護。
そうして訪ねたギザ台地には観光客は見当たらない。人気のないギザ台地に
立って壮大なピラミッドとスフィンクスの景観を眺めたその時の感激は、今でも忘れられない思い出である。
禁止されている大ピラミッドに登れたのも、地下の秘密の部屋に入れたのも皆、こんな時だからこそ出来たというわけである。
これまでに何度も出かけた遺跡探索の旅の中で、こうした貴重な体験が出来たのはほんのわずか。ペルーのマチュピチュで夜を過ごした体験も忘れられない貴重な体験の一つであった。南極とアマゾンで眺めた南十字星を標高2500mの
夜のマチュピチュからも眺めてみたいと思ったのがきっかけであった。その夢が叶えられたのは
当時クスコに住んでおられたセサル・ラトーレ氏の奥さんの尚子さんのご尽力があったからであった。
マチュピチュ遺跡は今は世界遺産に指定されているため、昼間でも好きな場所に近寄ることすら出来なくなってしまっている。それだけに、マチュピチュで夜を過ごすことの出来た体験は私と同行者だけに許された、二度と出来ない貴重な体験であった。それもこれもみな、学者が語る「歴史の嘘」を暴こうとする私に、天が与えて下さったご褒美だったのではなかろうか。