新型コロナウイルスの世界情勢への影響
再発の恐れ、紛争の始まり、国家財政の圧迫
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新型コロナウイルスのもたらす新たな危機が、これから始まることになりそうだ。 |
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一向に衰えない新型コロナウイルスのまん延状況。
感染者数は430万人を超え、死者数は30万人。中でもロシアの感染者増は際立っており、イタリアやイギリスを追い越し米国、スペインに次ぐ第3位となって、その数は23万人を超えてきた。
そんな状況下であるにもかかわらず、経済の失速を懸念して企業の再開を実施。さすがはロシアである。
こうした状況の中で気になる状況が幾つか出てきた。それは、以下の通り。
@ 沈静化した国での再発の恐れ。
A 国家間や政府と地方自治体の争い、企業と自治体との争いの発生。
B 国家や地方自治体の財政圧迫。
先ずは、「沈静化した国における再発の恐れ」についてである。
その代表的な例が韓国とイランで、感染予防対策がうまくいったとして評価されていた韓国では、外出禁止令が解除された後、首都ソウルのナイトクラブで再発した感染が集団発生化しつつあるようで、わずか6日間で感染者数が119人
となている。
また中東で最も早く感染が広まったイランでは、4月に入ってから沈静化傾向が見えて来ていたが、今月に入った頃から、再び1日の感染者増が1000人を超す状況となっている。
その要因は4月中旬にピークを過ぎたとして、閉鎖措置を停止し経済活動を再開したことと、イスラム教が祈りの月・ラマダン月に入ったことから、モスクでの礼拝を許可したことのようである。その結果、イラン政府は一部の都市で再び企業や商店の活動を停止する状況となっている。
感染状況の沈静化の後の再発については、かねてから危惧されていたことであるが、韓国やイランの状況を見ると、外出禁止令等の解除はそう簡単に出来そうもなさそうである。
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ラマダン月に入ってモスクでの礼拝が許されたイランでは
沈静化して来ていた感染者数が再び急増しそうな勢いだ。
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次に気になる「国家間や政府と地方自治体の争い。それに企業と自治体との争いの発生」についてである。
この点は私が最も危惧していたことであるが、それがいち早く始まったのが、米国での政府と地方自治体との争いである。経済活動を重視するトランプ大統領が閉鎖措置解除をアッピールする中、慎重を期さないと急増の危険性があると外出禁止令の解除に反対する州もあり、今もなお、政府と地方自治体との対立が続いている。
そうした状況下、企業活動の再開を巡って、米国では新たに企業と自治体との対立が始まる事態となってきている。既にこれまでにも小規模な小売店や飲食店などが、国や自治体の規制を無視して再開する事態は発生していたが、昨日から発生した衝突は、会社の規模が米国有数の会社であることから、自治体も厳しい状況に立たされているようである。
その会社はカリフォルニア州にある大手の電気自動車メーカーのステラ社で、自治体による企業再開禁止令を無視して、3月から停止していた工場を昨日から再開することになったようである。経営のトップは「強制的に再開をストップさせられるようなら、工場を別の州に移すことも辞さない」と強気でいることから、自治体のトップも厳しい判断に迫られているようである。
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カリフォルニア州では州政府の解除が出ないのに、
大手電気自動車メーカーの工場が再開される事態となっている。
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対立といえば、一番恐れていた国家間の対立も始まりだしたようである。これは貿易摩擦につながるだけに見逃せない問題である。その国とは、オーストラリアと中国である。問題の発端は、10日ほど前にオーストラリアのモリソン首相が、今回のウイルス危機の発生に関して、「ウイルスの発生源を調べるために、国際的な独立した調査が必要である」と強い口調で発言したことであった。
この発言に反発した中国政府は、オーストラリアから輸入している牛肉に関して検疫で違反が見つかったとして、オーストラリアン企業4社から輸入している肉製品輸入を全面的に停止する措置に踏み切ったのである。
実は中国政府は数日前に、オーストラリアからの大麦の輸入を禁止したばかりであった。オーストラリアにとって中国は最大の輸出国であるだけに、オーストラリアの農家にとっては大きな痛手となっているようである。
これから先の、オーストラリア対中国の対立は、世界情勢にも大きな影響を与える可能性が大きいだけに、気になるところである。
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オーストラリアのモリソン首相の発言がきっかけとなって、中国と
オーストラリアの対立が発生。 米国を巻き込んだ紛争が危惧されている。
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3番目の問題点は「国家や地方自治体の財政圧迫」である。
我が国を始め多くの国が、休業状態に陥った企業や職を失った人々に対して、支援金の支給を始めている。しかし、今や世界中の国々が歴史的に最悪な財政状況に陥っているだけに、どこの国も、政府が出来る支援には限界があることは間違いない。
そうした状況の中、今朝のイギリスのテレビは3月から6月まで、社員に給料を払えない会社に対して賃金の貸し出しを行ってきていたが、そうした措置をさらに10月まで延長することになったことを伝えていた。
しかし、新型コロナウイルスの終焉は相当先に延びることが予想されていることを考えると、イギリス政府の支援はさらに延長される可能性が大きいだけに、どこまでこうした措置が続けられるのかが心配である。
それだけに、もしもこうした状況がこれから先も長く続くようなら、財政が破綻する国家が多発することになるのではないかと心配になってくる。かといって、企業の破たんや個人の失業を見逃していたら、遠からずして社会の混乱は必至。
どうやらこれから先、外出禁止令の停止の時期や、政府や地方自治体の支援の打ち切りの時期の判断などが、一段と難しくなってきそうである。
今回の新型コロナウイルスが我々にもたらすものは、人と人、企業と国家、更には国家同士の争いであり、その先に待ち受けているのは、
失業や企業の破たんだけではなく、国家そのものの破たんもあり得るのではないだろうか。なぜか、私にはそう思えてくるのだが、いかが
であろうか。それは私の単なる邪推(じゃすい)に過ぎないことを願って、筆を置かさせて頂くことにする。
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